マツリダテニス

 「国枝」という名前を聞くと,賢明なる皆様におかれましては,アパパネの国枝栄を思い浮かべるのではないかと思われます。なお,小生はマツリダゴッホが国枝厩舎だということを完全に失念しており,国枝と言えばアパパネ,という認識でございました。
 ところがどっこい。世の中にいる国枝さんが1人だけなはずもありません。
 そして,これから登場する国枝さんは,世界一の国枝さんであります。もちろん,国枝界の世界一という意味ではなく,車いすテニスの世界一,国枝慎吾選手であります。

 さて。NPはこの業界に関しては完全なるニワカでありまして,ATPファイナルのチケットは直前に高値で買ったことはすでに触れた通りであります。で,ニワカがやりたがることの一つに,「通ぶりたがる」ことがあります。そして,通ぶるためにやることといえば・・・ちょっとマイナーな路線を攻めるわけですね。そして,それこそが車いすテニスなのでありました。

 この車いすテニス,世界的にどの程度有名なのかはもちろんニワカなので分かってませんでしたが,割と本気で狙っておりまして(直前にUCIのワールドカップのチケットを取り逃したことも影響している),8月上旬にチケットを買っておりました。そして,びっくりなのが,8月下旬に,開催日が一週間後ろにずれたこと。そういうものなのだろうか……。

 で,土曜日のドローは予選の結果に影響されますので,発表は前日夜。そして,なんと,国枝選手の試合は午前11時と判明。そして,同時刻に女子5位決定戦上地選手の試合も予定されておりました。また,順位決定戦側の最終試合に真田選手の試合も入っております。
 そんなわけでして,11時に現地に着くために午前5時台のバスに乗って7時台にロンドンビクトリア到着(このあと,10時台着まで売り切れ)。7時台でもまだまだ暗い。そして,ビクトリアのコーチステーションから駅に向かう道がきれいにクリスマスライトアップされておりました。

まだまだ暗い ライトアップ中

 それから,会場のストラットフォード付近で時間をつぶします。Stratfordは過去に2回来たことがあるので,おおよその勝手は承知しております。ここで軽く朝食とコーヒーを摂取。睡眠不足甚だしいので,コーヒー1杯で果たして耐えきれるのか……。
 で,無料バスに乗って会場に向かいます。SixdayLondonはバスを出してなかったのに,こっちはバスが出るんですな。まあ,テニスコートの方が駅から遠いことに加え,車いすの人を会場まで乗せていくためにバスが出ているんだろうと思われます。バスも,車いすを数台積めるタイプのものでした。もしかしたらこの辺にドカドカと補助金が出ているのかもしれない。

バス停はすぐ見つかる

 そんなわけでして,さしたる困難もなく無事に会場に到着。なかなかないことなので逆に不安になりますね。
 会場では簡単な荷物チェックを経て,すぐになかには入れます。パンフは無料でした。イギリスらしからぬ太っ腹っぷりです。逆に不安になりますね。なお,翌日も含めてパンフは余りまくってたので,まあなんというか,やはりスポンサー様ががんばってるか補助金が出まくってるかのどっちかなのではないかと思います。NECってそんなに余裕のある会社なんだっけか。
 この室内コートは,マックス4面とれるようですが,2面を座席に使っておりまして,1面と3面で試合,奥の4面で練習,という設営になっておりました。メインコートは3面で,勝ち上がり戦はここでおこなわれ,順位決定戦は1面でおこなわれておりました。

会場
正確にはこれは入口で
コートは左の建物
出場選手 狭い通路
ここを客と選手が通る
パンフ
たぶん男女バランスで
グリフィオン選手が
真ん中にいるんだと思う

 そんなわけでして,11時きっかりに,選手入場であります。まずは国枝選手。そして,対するはフランスのペイファー。ニワカなので当然名前はこの日知りました。今年イギリスでは,ウィンブルドンで国枝組を倒しているようです。今になって国枝選手の成績を見てますが,今年はシングルスは全豪と全仏で対戦しており,いずれも国枝選手が勝っているようです。
 とはいえ,まあ人間ですから調子の良し悪しは当然あるわけで,まあやってみんと分からんですよね。
 流れは普通のテニスと同様に(但しニワカなので「普通のテニス」をよく分かっていない),コイントスでサーブ権とコートを決めたのち,練習。試合始まる前なら写真撮ってもいいだろうというマイルールに基づきぱちぱち(なお,その後のアナウンスによればプレイ中はフラッシュやめろ,とのことなので,プレイ中も撮影可能なようです。さすがにプレー中はほとんど撮ってないけど)。
 びっくりしたのが,客の少なさ。まあ11時とかいう,日本競馬の障害レースも始まらないような時間だから仕方ないんだけれど(我ながらよくこんな時間にここに着いたものよ)。とりあえず,11時時点でたぶん30人程度だったんじゃなかろうか。気合い入れて8月にチケット買ったのが馬鹿みたいではないか。なお,11時30分ころに学校の生徒さんが集団で突撃してきたりして,結果的に100人程度は入ってたんじゃないかと思われます。
 また,賑やかしのために,バレーボールでよく使う空気チューブで叩いてバコバコ音出す奴(我ながら表現がへたくそで泣ける)が各観客に配布されておりました。僕は,邪魔だし自分の拍手力にはそれなりに自信があるのでもらったけど膨らませずに持ち帰りました。
 まあ,客が少ないので,あっさりと最前列をとれてしまうわけなのでした。試合をきちんと見る観点からだと最上段(といっても4列目)付近の方が見やすくはあるんだけど,ニワカにはそんなこと分かるはずもなく。

コート 国枝選手
右の車いすは普段使い用
座っているのが競技用
試合直前の集中 コイントス
試合前練習

 んで。車椅子テニス全体の感想はあとにまわすとして,とりあえず国枝選手が7-5,6-0で勝利。スコアだけ見ると(特に第2セットは)国枝選手の圧勝みたいですが,それなりにリードされたりもしており,有無を言わさない圧勝,という感じではありませんでした。とはいえ,そういう状態できちんと勝ちきるあたりが国枝選手の強さなんだろうとにわかな柄に思うのであります。
 そういえば。書き忘れそうなのでここで書きますが,シングルスでは選手はタオルを後方に置いておくことが多く,国枝選手もそうしております。で,基本的にはこれの管理はボール係が担当します。こちとらへっぽこテニス部出身者(なお,へっぽこは「テニス部」ではなく「出身者」を修飾しておりますのでお間違いなきよう)ですので,どうしてもボール係(英語ではBall Crewと言うようです)の奮闘に目が行きます。ところで,このボール係,見たところいわゆるColoaredな人も多く,どういう少年少女がやってるんでしょうかね?
 んで,コートチェンジの際にタオルを選手のもとに運ぶのもボール係の重要な仕事なのですが,一回,少年がこれを完全に忘れていたことがありました。忘れていることに気付いたのはNPだけでなくフォルト判定の審判もでして,座りながらなんとかボール係に気付かせようと手を振ってがんばっておりました。が,気付かず。あとになって思えば,僕が拍手するなりなんなりしてこっち方向に気を引けばよかったんだよな。
 また,国枝選手はタオルをボール係に手渡すか投げ渡すか,あるいは所定の位置に投げる訳ですが,一回,ちょうどボール係がボールを撮るためにかがんだ瞬間にタオルを投げてしまい,ボール係の頭にタオルがかかったことがありました。自分の記憶と耳が間違っていなければ,このとき国枝選手は「あ,ごめん」という言葉を発していたと思われます。こういうとっさの場面だと日本語が出るんですね(当たり前ですがトスの上げ直しの場面では"Sorry”と言います)。海外を転戦している国枝選手でも,とっさの場面では日本語が出てくるんだな,とほっこりしたのでした。

休憩中 首を冷やすのが
国枝選手の休憩の常
ボールクルーに
持ってもらっていいんですね
試合終了後 撤収

 そんなわけでして,国枝選手の試合が早めに終わったので裏の上地選手の試合へ。
 こっちは第2セット。このセットは途中まで上地選手がリードしておりましたが(裏から聞こえてきた審判の声を聞いた記憶が正しければ5-0),一気に形勢が逆転し(自分がくる前から形勢逆転モードだったので犯人は僕ではないはず),結局6-4,7-5で敗北。残念。
 順位決定戦は試合終了後すぐに順位表彰にうつります。

試合終了 コーチと握手するウィリー選手 表彰へ 表彰中 撤収

 さて,日本人選手の試合を見て満足したので,食事。食事は向かいにあるMarqueeで売られております。が,例によって高いので,徒歩10分足らずの場所にあるASDAで摂取。ここのASDAはかなり大規模なショッピングセンターになっておりました。

対戦表 Marqueeには,子供向けスペースも ASDAへの道 食事

 さて。午後です。QUADがどういうものなのか気になっていたので,第1コートへ。日本人がいないために思い入れ補正がかからないというのもあるんだけれど,QUADまでいってしまうと,見ていて競技としてのおもしろみに欠ける部分が大きいかな,という印象。
 地元イギリスのラプソーン選手(読み方よく分からん)がイスラエルのエレンリブ(なおのこと読み方が分からん)に逆転勝ちした試合ですが,そこまで英国応援団が集結しているわけでもなく,なんかもったいない気も。まあ,イギリスでも競技の認知度はイマイチってことなんだろうなあ。

試合終了 試合後の栄養補給 表彰式

 続いて,第3コート。男子準決勝のもう1試合がおこなわれており,ジェラルド選手(一般にはジェラールと表記されてるっぽいな。どう書こうか)がウデ選手を破り,翌日の決勝にコマを進めました。
 なお,この試合中,ついに睡魔がNPに襲いかかり,正直試合の記憶が完全に吹っ飛んでおります……。爆睡してる姿がカメラに捉えられていないことを心から祈ります。

奥のコートで真田選手が練習 審判服
ユニクロが目立ちすぎて
(奥はNECの看板だし)
異国にいる気がしない
試合終了 少年たちのサイン要求に応えるジェラール選手

 そして,本日の最終試合は真田選手の順位決定戦。
 とりあえずびっくりしたのが,最初に入場してきた真田選手の姿が,義足をまったく気付かせないこと。
 まあ,それはさておき,試合は,序盤は互角だったものの,その後は押される展開となり,結局2-6,3-6でシェファース選手に敗北。
 結果はさておき,もともと客が少ないところに(少年たちはこんな遅い時間まで残らない),準決勝ではなく裏の順位決定戦ということもあり,拍手が少ない。たぶん本当に20人もいなかったのではなかろうか……。真田選手側はいいとして(日本人がそこそこいたし),シェファース選手側の応援が皆無でして(その意味で,国枝選手のスタッフは声を出して会場の雰囲気を作っていた。これ,凄い大事だと感じた次第),エース決めても拍手なしとかちょっともう。こちとら小心者なので一人拍手状態になるとなにか間違っちゃいないか不安で仕方がない。

ボール係入場
もうちょっとしっかりダッシュしてもいいように思う
ボール係
膝をつくための
スポンジが設置されております
真田選手出陣 練習中
試合後の
シェファース選手とコーチ
コーチいたなら
もう少し声出したれよ…
双方の表彰

 その後,遅くまでやってる喫茶店を求めてCanaryWharfへ。が,こっちの勘違いでたいして遅くまであいてませんでした。無念。
 初めてDLRとやらに乗りました。ゆりかもめ的な無人運行電車のようです。車掌さんがやってきてちゃんと入口で改札したかチェックされました。それにしても,初見だとやはりどう考えても無理だと思うんですよね……。旅行者泣かせにしか思えない。いやほんと,一回危ない目に遭っておいてよかった。

Stratfordのショッピングセンターの
ライトアップ
迷子になった結果ここに到達
StratfordのDLR口
普通にここに改札機
設置すればいいと思うのだが
ホーム 電車内
どことなく台湾地下鉄とトルコ路面電車を思い出した
思い出した理由は不明
Canary Wharf駅 駅構内
もうちょっと目立つ場所に
改札機置いたらどうですかね
改札機

 この日はホステルでおとなしく就寝。翌日は午前9時から(9時30分だったかも)順位決定戦,そして午後1時から男子→女子→QUADの順番で決勝戦であります。てことで,ゆっくり寝たいのと空いた時間をつぶせる気がしなかったのとで,重役出勤しました。

ホステル
via Limehouse
CanaryWharfからの距離で
選んだのに,CanaryWharfに
長居しなかった…
駅と電車 「(しなさい)」ってなに?

 そんなわけでして,2日目。さすが決勝戦だけあって,バスも昨日より混んでおります。
 そして,びっくりなことに客席が両側に設置されておりました。4面をつぶしているわけですな。なるほど,おそらく午前の試合後,午後までに時間が空いているのはこの客席の設営のためだな。練習用コートは1面使えばいいんだし。
 で,昨日もいらしていた日本人の方に,手持ち旗お借りしました。大きな旗しか持ってなかったんで助かります。入口ではユニオンジャックが配布されておりました。そういえば,思いついたのでここで書きますが,この大会,商売っ気があまりになくて逆に不安になりました。それこそATPファイナルでは旗を売りつけていたわけで,ここでも1ポンドでいいから旗売ればよかったのに。あるいは,パンフも有り余ってるとはいえ,1ポンドくらい取ってもよさそうな出来(出来レベルでは競馬のRaceCardレベルは十二分にあるので3〜5ポンド相当と言うべきか)だしなあ。てか,こういう旗ってそもそもどこで売ってるのだろうか。

 とまあ,そんな意地汚い話は脇におきまして,なぜか登場するサンバ隊。会場を盛り上げます。うむ,なぜサンバなのか,全く分からん。分からんけれど,盛り上がるからいいのでしょう。
 ……と書いていて,そういえば翌年のパラリンピックがリオだったことを思い出した。空気チューブを膨らませずに放置するから思い出せないんだよな。でも,そこまでリオパラリンピックの宣伝をしていったわけでもなく,このあたりもまた商売っ気がない。この国で商売っ気がないとほんと不安になります。

2日目! 表彰式の際の入場訓練を繰り返すボール係
あと,球拾いの練習の姿がTwitterに載ってました
司会 サンバ隊入場!
サンバ 反対側にも お借りした日の丸

 そんなわけで,会場が暖まったところで,ボール係と審判団入場であります。

この日もNECと
ユニクロが目立ちすぎて
イギリス感ゼロ
走るボール係 審判団入場 主審
まだ座らない

 んで。ほぼ1時きっかりに両選手入場。拍手と空気チューブで出迎えられます。いよいよ決勝!!

決勝です 両選手入場 生着替えも見られます 両選手戦闘態勢整いました この日もHondaが目立ちます
見合って見合って 2人が笑顔なので
たぶん主審が何か言ったな
たぶん,国枝選手が
サーブをとったところ
いざ自陣へ!

 で。試合はフルセットにもつれ込み,5-7,6-2,3-6でジェラルド選手の優勝となりました。第2セットを取り,第3セットも3-0まで行ったところで行けそうな感じはしましたが,そこから6セット連取されるというまさかの展開。いやまあ,昨日同様,第2セット終了時点でも,自分的には,圧勝,という空気はあまり感じておらず,それでも3-0になった時点で「ああやっぱり王者ってのはこういう勝ち方をするんだなあ」と,前日の第2セット6-0を思い出していたのでした。そこからの逆転負けだからもう。これは,0-3になっても気持ちを切らさなかったジェラール選手(気分で表記を変えてみる)が凄いとしか言いようがないな。
 まあ,国枝選手もインタビューで言ってたとおり,ジェラール選手のサーブレシーブがよかった。何本エースとられたかカウントしてませんが,特にセカンドサーブはかなりやられてた記憶があります。

 とまあ,残念な結果にはなってしまいましたが(疫病神が見に行ったせいではないかという気もしている),生で決勝戦を観戦できたのは非常によかった。

コートチェンジ休憩 今日も首裏きつそう 双方タオル投げ
優勝後,主審と握手 コーチのもとへ 万感の表情 スコア 国枝選手
練習の甲斐あって
きれいに並べました
トロフィーと杯 国枝選手インタビュー ジェラール選手インタビュー …を聞いて笑う国枝選手
勝者と敗者 トロフィーを握りしめる 両者記念撮影 勝者記念撮影

 てことで,ここで突如ミーハー精神を発揮してサインゲットに動くNP。突如というほどもとからミーハー精神がないかというとそんなわけでもないんだが。
 が,国枝選手は反対側から去り,「30分後くらいに入口でなんかあるみたいですよ」という言葉を残してロッカーへ。そして,その後現れたジェラール選手とツーショット!……のはずが,カメラ頼んだ人が失敗したために撮れておらず。
 さらに,実際その後国枝選手が入口に現れ(現れないと帰れないから当たり前と言えば当たり前なのだが),ここでもツーショットを頼むも,再度頼んだ人が撮影に失敗しており写真なし。
 ……ほんと,お疲れのところ写真をお願いした両選手には申し訳ない。そして,今後は暗い場所での撮影はカメラでなくスマホで頼むことにしようと固く心に誓ったのでした。いやほんと,こんなに客が少ない場所で2人に近づけるチャンスなんて二度と来ないだろうからな……無念。そして,重ね重ね撮影に応じていただいた両選手に申し訳ない。

大使が来てたようです 何がびっくりって,男子サイン会が終わるまで
こんな場所で女子決勝進出者が待機してること
反対側ではサイン会 一応サインはいただきました
ちゅうか,ウデ選手って44なのか…

 そんなわけで,女子決勝は途中から観戦。
 この試合は女子世界一位のグリフィオン選手がエラーブロック選手(という読み方でいいのか自信がない)に6-2,6-2で貫禄勝ち。エラーブロック選手は40歳で決勝進出というわけで,ほんと凄い。あと,グリフィオン選手のサーブの打ち方がかなり特徴的というか,テニススクールでこれやったら速攻で修正されそうというか,腰を痛めないのか見ていて不安になる打ち方でして,おそらくこうやって反動つけて打たないとてっぺんには上りつめられないんだろうなあ。

試合終了 観客に応える コーチと
再度整列 たぶん男子と同じ エラーブロック選手インタビュー グリフィオン選手インタビュー
カップを手に 表彰 両者記念撮影 両者談笑 再度両者記念撮影 優勝者撮影

 そんなわけでして,時間がないのでこれにて退散。グリフィオン選手はえらいべっぴんさんでして,さっきの失敗を挽回すべくツーショットねだりに行こうかと思ったりもしたんですが,それよりバスの時間が不安だったので(結果余裕だったのだが)このまま何もせずに会場をあとにしましたとさ。

 てことで。にわかがニワカなりに思ったことを。基本的に,腰から下を見なければテニス自体は常識の範囲にとどまっています。腰から下を見なければ,ですが。よって,へっぽこが見ていて,行動が予想しやすい反面,常人にはなしえないようなびっくりプレー(繰り返すけれど腰から下を見なければです)がないので,ある意味興味がわかない人には全く興味がわかないだろうと思う。とはいえ。
 当たり前ですが,車椅子で動きます。なので,二足歩行ほど素早く前後左右に動くことは出来ません。その結果,ライジングが大事になります。というか,凄いです。特にバックなんて車椅子あるから両手バックはかなり難しく(というか事実上無理)それをライジングでさばくんだからほんと凄い。
 ツーバンオーケーなので,かなり深い位置でストロークすることも可能なのですが,屋内コートで後ろが近いので,かなり大変そうでした。審判椅子とか邪魔になるしな。
 他方,ツーバンオーケーゆえ,ドロップはかなり拾えます。ドロップエースはかなり難しい。もちろん,ドロップを打つことで前後に相手を振ればそれだけ相手を疲れさせることができるので,有効な作戦ではある。ただ,ドロップへの返しもドロップになりがちで,かなり諸刃っぽい。どっちかというとその後のストロークで相手の読みを壊すためにやってるのかもな。とにかく,ドロップショット自体は何回も見たので,そりゃ有効なのは間違いない。
 前に出ると言えばボレーですが,これがなかなかきつい。というか,そもそも前に出てくる選手が少ない。おそらくこれは前に出るスピードがなかなかつかないことに加え,車椅子だとどうしてもネットとの距離が必要になりボレーをネットに引っかけるリスクが高いこと,左右の移動が二足歩行ほど素早く出来ないので左右に振られたらかなりきついこと,が理由なのではなかろうか。あと,ツーバンオーケーなので浅くボレーしても拾われやすい。自分が見ていた範囲で,ボレーエース決めたの国枝選手だけだったような。
 国枝選手が苦しんだサーブですが,そもそもサーブレシーブへの対応が難しい。サーブ時は当然止まっているわけで,ゼロ発進に体力が必要なのは中学生物理知識です。用語は忘れたけど。それもあってか,サーブのブレーク率は全体的に高い。特に女性が大変そう。
 他方,レシーブ側は,相手がサーブ体制に入ると前に動き,動きながら打ちます。二足テニスだと「止まって打つ」ことが重要視されますが,こっちは動きながらレシーブです。これは,勢い負けしないためなのかな。ゼロ発進が大変なので,スプリットステップ的に前に出ているのであろうことは間違いなさそう。
 というわけで,全体的に読みが非常に大事。これを外すとかなりきつい。おそらく,かなり相手のテニスを研究する必要があるんじゃないでしょうか。
 本題とは関係ないけれど,選手によってボールの保管場所が違っていて面白い。日本勢は後ろにかごをつけてます(見たところ日本勢だけだったけど,特許的な何かがあるのだろうか)。多いのがホイールにボールを嵌めるタイプ。ボールが落ちないか不安になるけれど,特にそういうイベントはなし。膝の上に乗せてる人もいました。なおボールが落ちないか不安になる。
 とにもかくにも,利き手の酷使っぷりが半端ない競技でありまして(車椅子動かすのにも手を使うわけで),これほんまに凄いわ。

 なお,大会みついては,スタッフが全体的に極めてフレンドリーでして(そもそも,イギリスって「店員が無愛想」だのなんだの聞いてたけど,若い店員を筆頭に全体的に店員のフレンドリーさはかなりのもんだと思う。嫌な思いをした記憶がほとんどない),非常にいい大会でした。時間的に無理だろうけれど,また行きたい。


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