ネギシモノノフ

1 戦国武士と馬

 根岸の馬の博物館にて、「戦国武士と馬」展が開かれておりました。一応戦国時代好きとしては行きたい展覧会だったんですが、如何せん根岸が遠い。というわけで、重い腰を上げてようやく乗り込んだのでした。到着時点で16時頃。日も傾きつつある時間であります。

 久々の根岸ということで、シンザン像に挨拶。前回根岸を訪問したのは2013年のことでした。梅を見に行ったのは覚えてます。

シンザン 博物館外観

 根岸のアップダウンのきつい場所にある博物館だから、というのはもちろんあるんでしょうが、この根岸の馬の博物館、もの凄く面白いかたちの建物ですよね。若干バブルの香りもしますが、バブルの遙か前につくられてたりしそうなので、たぶん気のせいでしょう。

 今回の特別展は撮影禁止だったので特に現場写真は無しです。当時の感想は以下の通り。

- 犬追うもの。囲んで矢を打つのがやばい。弓矢が想像以上にでかい徳川慶福が好きだったとは、以外に最近まであるのね
- 馬具の使用痕から使用方法を推測するのね
- のぶかつの馬首デザインの印鑑がかわいい
- 1659のこうようぐんかん、馬の博物館にあるのね

 というわけで、真っ先に登場した犬追物の屏風絵に興奮であります。騎射三物のうち、日本中でおこなわれているのが流鏑馬(私は宇都宮二荒山神社で見ました)。三浦半島でダービーでにおこなわれているのが三浦道寸祭りの笠懸。笠懸のときにも書きましたが、犬と動物の権利が高まった現代の日本で犬追物をやるのは200%無理でしょうから、犬追物は屏風絵で楽しむしかありません。
 屏風絵を見て驚いたのが、犬追物のやり方。鷹狩り的に、広い狩り場的なものがあるのかと思ってたら、まさか武士が囲んでいたとは。そして、てっきり鎌倉から室町初期程度のものかと思ってたら、徳川慶福が犬追物を好んでいたという話があるとは。5代綱吉が泣くぞ。徳川慶福のWikipediaによると、徳川慶福は「幼少の頃は風流を好み、池の魚や籠の鳥を可愛がるのを楽しみとしていたが、13歳で将軍として元服してからは、文武両道を修めるように努めた。」とのことで、魚や鳥をかわいがっていた幼気な少年が犬を射るようになったと思うと感慨深いですね。
 馬に関する伝統といえば小笠原家が思い浮かびますが、犬追物のやり方についてもこういう名家に密かに受け継がれているのでしょうか。実演レベルで受け継いでいることがバレたら大変なことになると思うんですが、秘伝書とかはあるんでしょうかね??今の日本だとCGレベルでもクレームが出そうですが、他方で伝統は伝統として「こういうことをこういう風にやっていた」というのはなんとか残しておいてほしいものです。

 そのほかの感想はまあそのまんまで特に付け加えることもありません。甲陽軍鑑、馬の博物館が持ってることに驚いてますが、写本ってどの程度広まってるんでしょうかね。

 以下は、泡沫サイトなのをいいことに自分のためにアップ。すぐに削除しますので、クレームは掲示板で。

チラシ 出品目録

 特別展を見て思ったのが、博物館が古さを隠せないこと。特に、南部曲屋展示が展示室2にくっついているという構造はなかなかきついですね。無駄に音が鳴ってるし。
 せっかくなので、博物館で貰ったパンフレットもアップ。
 1階の第1展示室は横浜の競馬の歴史的な展示。地下1階の第4展示室が常設展のメインパートで、馬の進化や馬と人間の関わりなどを展示しております。パンフレットからだとそのあたりの空気感は伝わってこないので、行かないと分からないですね。


 最後に、夕日に照らされるトキノミノルとシンザン。様々な掲示板解説板を見ると、馬の博物館の経年劣化ぶりも伝わってきます。JRAはコロナ特需で儲かってるんだから、余裕のあるうちにここをなんとかしてほしいところですが、ダメでしょうかね??

トキノミノル 老朽化が進むとされる旧根岸競馬場スタンド
シンザン 日焼けした看板。もはや読めない
公苑案内図 森林公園案内図 根岸競馬場跡 馬運車 滝の上からのバス

 博物館に行ったあとの私のTweet。

#馬の博物館 にて #戦国武士と馬
寝坊したのでギリギリに。
いきなり犬追物のなかなかな屏風からスタート。周りから矢を射るとして、真ん中の人がなぜ無傷で済むのかが謎でした。
あちこちで評価の低い織田信雄さんは、馬の印鑑使ってたとのことで自分的評価が爆上がりしました pic.twitter.com/lSxFVmmubH

— black.king (@northern_shower) October 22, 2023


2 競馬法規

 ほかに置き場所もないのでここに。
 このころ、たまたま蓑虫屋さんで「競馬法規」という冊子を買いました。競馬学校で使われているようです。てっきり法規だけが書かれた無味乾燥なものなのかと思ったら、絵入りで書かれた分かりやすいものでした。これなら中学校を出たばかりの騎手候補生の皆さんも理解できるかもしれません。高校時代の私が理解できたか、と言われると疑問ですが。


3 フィナーレ展 うまはく所蔵優品展

 戦国武士と馬展の感想でも触れましたが、正直なところ馬の博物館は老朽化が目立ち、また展示室構成も微妙で、修繕不可避だと思っていました。
 と思っていたところ、馬の博物館が休館するとのニュースが流れてきました。もちろん、休館自体はもっと早くから決まっていたのでしょうが(従業員問題もあるしね)、とりあえずニュースになったのは遅い時期です。
 そして、休館に伴って開催されることになったのが、「フィナーレ展 うまはく所蔵優品展」であります。最後なので、馬の博物館が所蔵している名品を展示しましょう、ということですね。
 てなわけで、再び根岸まで遠征。タイミングを逸しまくったので訪問は最終営業日、1月28日になりました。前回は16時でしたが、今回は頑張ったので15時くらいに到着。最終営業日かつ日曜日なので混んでるのではないかと不安でしたが、まそこまででもありませんでした。この施設、こんな感じに赤字を垂れ流してて大丈夫なんでしょうかね。そういえば、休館といえば、最終日にマスコミは来てたのでしょうか。

入口 中の様子 博物館 正面
「優駿」の広告が目立ちます
到着は15時5分ころ

3.1 第1展示室

 そんなわけで、中へ入ります。上にも書いたとおり、混んではいたものの(前回の戦国武士と馬展に比べると)、別に疲れるほど混んでいるわけではありませんでした。混雑という意味では、やはり科博の特別展が一番きついです。

 フィナーレ展ということで、今回は基本的に撮影OKな第1・第4展示室の写真も撮っていったんですが、例によって、泡沫サイトなのをいいことにどこまでアップするか問題があります。まあ、自分の記憶喚起が最大の目的なので、それなりに。

 ちょっと驚くのが、根岸競馬を描いた現存する浮世絵は1つだけだということ。不忍池の競馬の浮世絵はいろんなところで色々なものを見ますが、根岸のものは少ないんですね。時代的に浮世絵の時代が終わってたからなのでしょうか(その代わり写真が残ってる、ってことでしょうかね?)。

入ります 第1展示室 根岸競馬通史 洋式競馬のはじまり
横浜の洋式競馬等施行変遷図 ジャパンウィークリーメール報道 展示の様子
日本レースクラブ記載の洋式競馬の記事 根岸に競馬場誕生 根岸村内地外国人
輪乗其外馬場絵図
根岸競馬場初競馬初日の模様
横浜居留地覚書 横浜居留地改造及び競馬場墓地等約定書 駐留軍告別カップ 居留外国人の競馬
ジャパンパンチ 伊藤博文勝負服 日本レース倶楽部結成 根岸競馬初期の主な顔ぶれ ミカン号の勝利
東京不忍大競馬の図 大日本横浜根岸万国人競馬興業ノ図 写真 馬券発売禁止に関する懇願書
単勝投票券と招待券 神崎利木蔵騎手
Dickという愛称は
喜んでいい奴なんでしょうか
ザ・バンカー 馬券発売禁止と競馬法改正 横浜競馬場と
横浜農林省賞典四歳呼馬競走
第1回優勝はロックパークと稲葉幸夫騎手
吉川英治 かんかん蟲は唄う
カンカンというと
斤量のイメージですが……
横浜特別競走と新スタンド 横浜開催の終焉 横浜最終日の競走成績と
菊池寛
セントライト 戦後。スターズアンドストライプス
根岸競馬と天皇賞 摂政時代の昭和天皇の根岸行啓 ハルカゼ優勝時の帝室御賞典優勝賞品
チャペル優勝時の帝室御賞典優勝賞品 御下賜品競走の
歴代優勝馬・優勝賞品
帝室御賞典競走から天皇賞へ 日本レースクラブ写真
天皇賞盾レプリカ タケシバオー蹄鉄 サクラユタカオー蹄鉄 SアイザックスとJHモーガン 1996年の空撮写真 1908年帝室御賞典
一等馬見所の200分の1模型

3.2 第2・第3展示室

 下に降りて、メインの特別展は撮影禁止。ここに関する当日のメモは以下の通り。

- 山羊形鏡板轡。山羊が美しい
- どでかい埴輪馬。伝神栖氏出土ってどういうこと?
- 三彩女子騎馬俑。鮮やかな色使いだが、何をやってるところ?
- 厩図屏風。桃山時代。1扇に1頭の馬。馬の形が桃山で、パワフルである。アイデア含め、おもしろい。ブチ毛の馬はこのころもいたのね
- 巻狩図屏風。狩野探信。朝鮮への贈答品の関係。こちらは繊細。
- さとうせき。弘前藩由来。馬の腸結石とのこと。津軽家で馬の玉として秘蔵。天皇に献上した歳に削ったとのこと。どうやってこの博物館にきたのか。鼻くそ丸めてる現代人に通じるな
- 御成敗式目46条では、土地所用者のご家人に変更があっても、牛馬はもとの所有者のままとのこと。
- 流鏑馬図巻。板谷慶舟廣当。これも繊細。矢は見張りに当たらないのか。
- 葛飾北斎の馬尽シリーズは知らなかった。馬そのものは描かないのがなるほどね
- 根付。立ち馬の形が独特。立ち馬に猿が乗ってるのはかわゆい

- 御料馬。御料牧場跡に行ってないのよなあ
- 金華山写真。薄さがなんともいえず儚く、美しい

- 騎手、ロートレック。この角度は珍しい
- ライオンに脅かされる馬、スタッブス。馬の表情がたまらん。
- ピカドールと馬、ピカソ。ピカソの絵なんて持ってたのか

- 三井高義氏のトキノミノルとシンザン。やはりこの2頭である
- 北杜夫マンボウ酔族館草稿なんてのも

- 第3展示室は横尾忠則の絵

 とりあえず、最も印象的だったのが鮓荅石。「鮓荅」の字がスマホで出せなさそうだったので現地ではひらがなです。写真は禁止ですが、うまはくのホームページに写真がありました(多分リニューアル中にホームページも改装されるのでリンク切れになるでしょうが、気にしない)(と書きつつ、一応魚拓)。
 非常に痛々しいものなのですが、実際馬的には中にこんな石があって体調に影響は出ないのでしょうかね?ムラ馬が走ったり走らなかったりする原因はこういうところにあったりしないのでしょうか。

 さて、廊下には、過去の写真をとともに撮影OKなコーナー。といっても、廊下の幅を考えるとなかなかに撮り方が難しい。
 やはり気になるのは昔の写真と、野間馬がらみでみきゃんもここにきていたようです。西郷さんのミカン号と合わせ、ミカンが目立つのが馬の博物館であります。


 ちなみに、ここでこの日のメインレースが根岸Sであることを思い出しました。根岸Sの日を最終開館日にしたのは意図的なのか偶然なのかは私の知るところではありませんが、せっかく根岸にいるのに根岸Sの馬券を買わないのはもったいない、という思いで馬券を購入。地下なので電波が悪いため、ちょっと苦労しました(電波の良いところを求めて動きが不審者になった)。その結果、入館料が数倍に膨れ上がったんですが、誰がどう責任を取ってくれるのでしょうか。


3.3 第4展示室

 そして、メインパートの第4展示室。
 ここの写真はきりがないですね。最近は色々なところで馬の進化について見てる気がするので、軽く流します。

展示の様子 ウマの進化 ヒラコテリウム
前が4本後ろが3本 メソヒップス メリキップス
進化の様子 プリオヒップス エクウス
ウマ科の臼歯 ニセウマと1指の動物 鼻の大きなウマ
ヒトと出会った頃のウマ ウマから馬へ 様々な能力 骨格のつくり 内臓の仕組み
展示の様子
馬力体験できます
感覚機能 馬糞標本 馬力とはなにか 押型車馬文空心磚
馬からできるもの 馬肉
鞄やボールと馬肉とで
なんとなくインパクトが違う気がする
硬式野球ボール
誰のサインだろう
馬を飼う ヒッポサンダル 蹄鉄
馬乳酒の製造・携帯道具 スーホの白い馬と馬頭琴
モウコノウマ 鎌倉時代の馬 御崎馬 トカラ馬 済州馬
馬の品種・日本の馬 日本から出土したウマ科の化石 日本在来馬のルートと分布 改良される和種馬 サラブレッド ジェネラルスタッドブック
馬具の用途 馬との約束 馬の背とロバの背 奇跡の馬具・ハミの発明 デレイフカのハミ

3.4 さらば根岸公苑の博物館

 というわけで、お疲れ様でした。売店で買うべきものは前回買っていて、特に名品選の図録もなかったので、お布施がてら絵はがきを買って終了。この日の最大の出費は根岸ステークスになったのでした。

インスタ映えスポット 売店にある
一等スタンド貴賓室のドア

 馬の博物館がどのようにリニューアルされるのか、場所的に赤字濃厚な施設だけにJRAが気合いを入れてリニューアルする姿が全く浮かんでこないのが不安ではありますが、とにかく長期放牧に出る以上は、戻ってきたときにリフレッシュして変わり身に期待したいところであります。

シンザン トキノミノルと旧スタンド 博物館 また会う日まで 休苑案内 Notice

 そういえば、フィナーレ展来館者先着2000名に、オリジナルクリアファイルプレゼントの企画をやっていたようなのですが……最終日に訪れた私も、クリアファイルをゲットしてしまいました。
 ううむ、クリアファイルを渡し忘れてたり、1家族で1枚しか持っていかなかったパターンとかもあったりしそうではあるけれど、それでも最終日までに2000枚はけなかったと考えると、なかなか難しいですな。


フィナーレ展にご来館いただいたお客様 先着2000名様に馬の博物館のオリジナルクリアファイルをプレゼント♪ 根岸競馬場の跡地にたつ博物館を地図で見ると、公苑の外周道路の形にコースの形が残っているのが分かります。ぜひ展示室の説明とあわせてご覧ください✨ https://t.co/9pAHMZrXjh pic.twitter.com/lfKN1sQLs9

— 馬の博物館【公式】休館中 (@hanimakun) December 9, 2023


入場券裏表 チラシ いただいたクリアファイル
前回も貰ったパンフレット 配られてた絵はがき
知ってみよう調べてみよう

4 おまけ

 この日の帰りは、伊勢佐木町でバスを降りて、辨天湯という銭湯へ。さすが街中の銭湯だけ混んでいる……と思ってたら、常連さんによると普段よりも混んでたとのこと。うまはく帰りの客が多かったのでしょうか。そんな空気感はゼロでしたが。


 食事難民になり、最後は三國家で家系ラーメン。不健康極まりないですな。ごちそうさまでした。


 この約1ヶ月後には府中で家系を食べることになります。ラーメンの摂取量を控えようとしてるからといって、家系ばっかり食べてたらそりゃメタボります。根岸の博物館が放牧から帰って来るまでは五体満足でいたいものです。



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