売上論と新馬券論

by NP

 先日、週刊『競馬ブック』(7月23日発行号)の一筆啓上コーナーで石川ワタル氏がすばらしいことを書いていました。
 いわく、馬券の種類の増大について、「それが必ずしも馬券売上金の増大につながるとは限らないが、競馬開催のよしあしは馬券売上金の多い、少ないで判断されるものではない」。
 僕が知る限り、馬券の種類の増加と売上金の問題を切り離して考えた(考えるべきだと主張した)文章はこれが初めてです(多分他にもあるんでしょうが、僕は最近あまり競馬雑誌を読んでないもので・・・すいません)。

 そう、馬券の種類と売上は離して考えるべきなのです!!
 数年前、ワイド馬券が発売されたとき、選考発売の大井競馬で結構売れたことから「大井競馬では馬単が発売されており、大井競馬のファンはこのような馬券が当たらないことを知っているために、当たりやすいワイドが売れたのであり、馬単を発売していないJRAでは、ワイドは売れるはずがない」ととある雑誌のコラムで論じ、JRAでワイドがそこそこ売れると、「ファンは馬連が当たりにくいことを知っているためにワイドが売れるのだろう」などと、過去の自分の文章のことは忘れたかのように、えらそうに分析している人がいました(これがどの雑誌のどのコラムか分かる人はS.W.位ではないか、という気がしなくもない)。このコラムはもうないし、このコラムのライターも最近名前を見ないのでどうでもよいのですが、まあ、僕も含め、一般的な経済分析能力なんぞ、このライター氏と大差ないと思うのです(まあ、このライター氏は「何が何でもJRAを批判しなければ気がすまない」日刊ゲンダイ的思考の持ち主だったので、経済分析とかそういうもの以前の問題のような気もしますが)。

 以下本題。相変わらず前置きが意味不明ですいません(本文も意味不明ですが)。
 で、一時期目立ったのが、「馬単導入すれば絶対売上が伸びる。だからこそ馬単を導入すべきだ」などと言う人。最近はあまり見かけませんが(ようするに、この原稿自体が機を大幅に逸してるってことなのです)。
 結局、JRAの売上問題に切れ込もうとしたとき、JRAの批判ばかりしてもライターとしての説得力が皆無なため、何らかの積極的意見を書かざるを得ず、そこで新馬券が常に槍玉にあがる、という感じなのではないかと思います。
 そして、ここにおいて、「新馬券を導入すれば売上が絶対上がる」などという意見は、JRAに対しては何ら説得力をもたないことは明白です。なんてったって、馬単を導入した地方競馬の売上が伸びた、なんてことはないですし、ましてや馬単のおかげで黒字になりました、なんて事例はもっとまれです(本当はここらへんのことを説明するために地方競馬の収支表を載せたかったのですが、諸事情=私目の怠慢&時間不足、によっておじゃんになりました。もし『白馬』にそのことを書く日がきたら、そのついでにこっちのコラムもいじると思います)。また、逆に、売上論と新馬券を結び付けて、「売上が上がるから新馬券導入しろ」と言ってしまうと、万が一売上が下がった時に、「売上が伸びないのだから新馬券を導入する必要はない」という、逆の理論も成り立ちかねません。これでは逆効果もいいところです。
 ようするに、本気で「新馬券を導入すれば売上が伸びる」といいたいのであれば、「なぜ地方競馬では新馬券を導入しても売上が伸びないのに、JRAでは伸びるといえるのか」を説明しなければならないのです。そのためには、おそらく地方競馬と中央競馬の購買層の違いや、イメージアップによる新規馬券購入者の推定人数とそれに基づく新規購入層による売上増、逆に、旧来からの購入層への影響・・・なんてことを延々やらねばならないでしょうし、そんなことは頼まれなくてもJRAがやってるはず、です。そんなJRAに対して、印象論?から「新馬券を導入すれば売上が絶対上がる」などと言っても、説得力があるわけなく、ましてや、あのプライドの高い官僚の方々です。逆に意地になって導入しないかもしれません(んなこたーないか)。
 まあ、つまり、こういう意見ってのは、飲み屋かどこかで、「売上だか何だか知らねーがとっとと新馬券導入しろ!」っていってるのと何ら変わりない、ってことです。中途半端に理論家ぶってる分、なお性質が悪いかもしれません。

 誤解をしてほしくないのですが、別に「売上がどうでもいい」といいたいわけではありません。われわれの大事な金を使っている以上、ちゃんとした使い方をしてくれなければ困りますし、ちゃんとした使い方をするのがJRAの義務であり責務だと思っています。ただ、売上論と新馬券を切り離すべきだ、ということが言いたいだけなのです。はい。

 結論。JRAはなんでもいいから、とっとと新馬券導入しなさい!!(・・・これの草稿ができたときにはまだ馬単・3連複の導入が決まってなかったのです--;))

おまけ
草稿だなんだ、ってのはどういうことなのか・・・・・・
  ご存知のとおり、このサイトのコラムは白馬の会の会誌、『白馬』からの転載・引用が結構多いわけなのですが、私NPがその『白馬』に書こうと数年前から思っていたのが「毎日王冠Special」と題した文章なのです。これは、というと、サイレンススズカ、グラスワンダー、ランニングゲイル(笑)らが集った毎日王冠の売上が落ちた!ということにショックを受けた(わけではないけど、話の都合上ショックを受けたことにしている)NPが、受験勉強の暇つぶしに?ちょっくら売上について考えてみるべか、というノリで書き始めたものなのです。NPは最近多忙を極め、というほどには忙しくはないですが、受験勉強をしてた頃よりは忙しいため(こんなんだから浪人するのですが)、もはや「毎日王冠Special」を書くのを諦め、そこに書くはずだったネタを小出しにしていこう、ということになった次第です。