福山草戸千軒競馬宣言その1
福山には過去3回行ったことがあります。1度目は福山城と福山競馬,2度目は尾道帰りに立ち寄り,3度目は(福山城再訪と)鞆の浦への旅行。東京にいたときは「福山」といえばなんで新幹線が止まるのかも分からないような場所でしたが,広島と岡山の中間に位置する交通の要所である福山の重要性は昔も今も不変なのであります。本当は福山多度津フェリーに乗りたかったんだけど,こればっかりは歴史の流れ。
そして「昔」における福山の重要性を示すのが,まず福山城の存在であり,鞆の浦の存在であり,そしてこの草戸千軒の存在なのであります。
文系諸氏であれば,歴史の授業で「草戸千軒」という名前を聞いた記憶はどこかにあるんではないかと思います。ですが,少なくとも上記の通り福山の重要性を全く認識してない関東人NPは,この有名な草戸千軒が福山にあるということは知らなかったのであります。
で,いつこれを知ったか,といいますと,最初に福山を訪れた際に,福山城天守内の博物館(みたいなやつ)に行ったときであります。本来であればそのときに,あるいは3回目の福山訪問時に何とかしておけば良かったのですが,これまで草戸千軒関係の場所に行くことがなかったので,このたび初めて行くことにしたのでした。福山競馬場が潰れる前にもう1回福山競馬場に行っておきたかったのでそのついで,と言うのが本音の部分だけど。
さて,福山市の観光協会のページを見ても,草戸千軒についてはあまり触れられておらず,福山市は福山城と鞆の浦の2大看板で観光客を誘致しようとしているようです。一応競馬の存在も忘れてないあたりはまだ良心的といえます。
福山で草戸千軒について学ぼうと思ったらどこに行くか,というと,福山城のちょっと西にある広島県立歴史博物館であります。入場料は290円と中途半端にしてリーズナブル。
レンタサイクル&駐輪場入口 | 借りた自転車 |
というわけで,福山駅。トイレに紙がないことに驚きつつ,レンタサイクルで自転車を借りて出発進行。福山駅の駐輪場・レンタサイクルシステムは高松駅のそれと非常に似ておりました。どっちかがどっちかを参考にしたのでしょうか?とにかく,このレンタサイクル+駐輪場の充実ぶりは嬉しい限り。最近は主要駅にレンタサイクルが充実してていいですね。管理費用考えて収支がどうなってるのかは知りませんが。
さて,この歴史博物館,観光協会があまりプッシュしていないからといって舐めてはいけません。草戸千軒の調査発掘等に結構予算がおりたのかなんなのか,博物館としては非常にこだわりがあって,楽しめました。もしかして,福山市があまりプッシュしてないのはこの博物館が県立だからなのかもしれませんが,まあそういう縦割りやら県と市の対立やらは(それはそれで明るみに出たら面白いのだけど)ここではどうでもよいことであります。
常設展前半は,福山の位置づけと歴史で,鞆という瀬戸内航路に置いて重要な位置にあった港の存在などをクローズアップ。淡水物だけの貝塚の存在から昔の瀬戸内海の状態を推測するってのはあたりまえのことなんでしょうが,お馬鹿NPには結構凄いことに思えたのでした。あと,三角縁神獣鏡の鏡側を見たのは(レプリカだけど)もしかしたら初めてかもしれない。
そして,お待ちかねの?草戸千軒コーナー。草1の入口には,よく分からない1分間のショートムービースペース。草戸千軒の360度パノラマ映像や出土品が浮かび上がってくるのですが,個人的には予算の使い途を誤っているようにしか思えないのでありました……。
気を取りなおして,草戸千軒第1展示室,通称草1。入ると,中央に草戸千軒の再現,周囲の壁際に出土品やジオラマ模型など。
この草1の中央部の再現コーナー,これが非常によくできています。狭い博物館スペースでよくぞここまで,という感じ。設定は午後6時頃とのことでありますが,写真に撮ると確かにそんな雰囲気。作った方々の熱意とやる気と楽しさが一挙に伝わってきます。いやまあ,「よくある中世の門前港町だろ」とかいう感じに一刀両断されたらまさにその通りとしかいえないわけですが,そういうニヒリズムをも黙らせるだけのコーナーだと思います。
そんなこんなで草1を出て,続いて草2。土器の組み立てコーナーなどもあり,他方でここは撮影禁止なので大事な展示もあり,お勉強ができるわけでした。
博物館外観 | 船着き場 | 商店 | ||
土器を干す | 本当に夕暮れみたい! | 家の中 | 作品集 | |
家の中 | ジオラマ。2つの角度から |
で,こちとら福山競馬場という大目標があるので,あまり長居もできず,博物館を後にしました。草戸千軒の簡単な薄い本があったら1階の売店で買ったのですが,やっぱり一般的な認知度も低く一般向けのものを作っても売れないのか,あるいは1回作ったけど増刷するだけの価値がないと判断されたのか,とりあえず学術的な本しか見あたらなかったので,退散。
結構横になが細いスペース |
人口密度は濃いです 無料バスもあるんだから本場に行けばよいのに… と思ってしまう自分はまだまだ甘いのでしょうか |
さて,福山駅には場外馬券売り場があります。これまで3回行ったわけですが,ここの存在には全く気付かず,後日ネットを見てたら初めて場外馬券売り場の存在を知ったのでありました。もっと駅で宣伝したらいいのに。
というわけで,高架をくぐって場外馬券売り場へ。中に入ると,まさに「場外」という感じのよどんだ空気。「へぇ〜馬券買えるんだ☆行ってみよ(はぁと)」といった雰囲気の一見さんを全く寄せ付けない素晴らしい?施設であります(よって当然中の写真撮影など無理)。しかしまあ,駅から徒歩1分程度の場所にある場外ってのはかなりの希少種であり,是非とも他の駅もここを見習って高架下の空きスペースを有効活用していただきたいものです。
さて。草戸千軒は,明王院の門前町的性質のあった街でありました。というわけで,次の目的地は明王院と,その横にある草戸稲荷であります。
自転車で川沿いの土手をしばらく進むと(明らかに自転車が通ることを想定されていない自動車道路で,ここを走ったことを強く後悔。そういえばバスに乗ったときも道が狭かった記憶があったなあ……),草戸稲荷らしき建物と橋が見えてきます。そして,橋の近くにちょうど良い駐輪スペース。草戸稲荷参拝用というよりは,川に降りて釣りをするための駐輪スペースという感じではありますが,とくに用途は制限されてないので自転車を停めて橋を渡ります。
いかにも稲荷神社,という赤い建物。そして,「神社と言えば古き良き木造日本建築」といったつまらない固定観念をあざ笑うかのような構造。どういった理由でこのような神社が造られたのか全く知る由もありませんが,とにかく斬新。川が氾濫した際に本殿が水に浸からないように,といった配慮かな?
土手から草戸千軒方向 | 橋 | 橋 | 橋から稲荷 | 稲荷 |
手水 龍です |
拝殿 | いつもここから | 末社 | 鳥居 |
見上げます マンションみたい |
頂上が見えてきます | 頂上の拝殿 | 上から見下ろす | 草戸千軒遺跡方向 |
下り階段から | 中の構造 コンクリの骨組みとパイプが走っていて なんとなくわくわくします。 ゲームだったらうまくジャンプしないと ダメなステージですな |
再度稲荷を見る |
そして,次は明王院。草戸千軒はこの明王院の門前町だったわけなので,こっちもお参り。宗教観念ゼロでありますが,そこらへんは日本人なので許していただきたいところであります。
歩いて行こうかと思ったのですが,自転車を回収しないと面倒なことになりそうだったので,一度橋を渡って自転車を拾います。
でもって明王院。ちょっと奥まった場所にあり,どこに自転車停めていいかもよく分からない感じでしたが,まあどうせそんなに車通りもないので駐車場にポン。
敷地に入ると,まずは十王堂。えんま大王以下10の王(この「王」って単位は何?人?匹?体?)がまつられているとのこと。中を覗き込むと確かにそんな感じ。しかし,仏像(含王像)はよほどインパクトのある表情とか格好をしてくれないとあまりピンと来ないのでありました。
階段を上って山門をくぐると境内(ちなみにこんな感じに斜めにあがっていく階段って見た目がよいですね)。正面に本堂,左手に五重塔がお出迎え。どっちも国宝とのこと。ほうほう。本堂は瀬戸内海地方では最も古い部類の建物らしいのですが,色を塗り直してるとあまり古さを感じないですね。しかし本堂より五重塔の方が国宝指定が早かったのはなぜ?建立された年の判明時期?
奥の愛宕神社にも心ひかれるものがありましたが,残念ながら福山競馬にもっと心惹かれているため退散。
十王堂 | 山門へ向かう階段 | 山門 県重要文化財 |
手水 | 本堂 |
本堂 | 本堂 | 奥にあった地蔵様 | 五重塔 | 五重塔を下からのぞき見 |
別角度から五重塔 | 本堂と五重塔 | 神社へ続く階段 |
福山競馬場に向かう道すがら,草戸千軒遺跡の上の橋を通ります。
博物館で遺跡発掘作業の写真などが展示されていたので,もう少し何か痕跡があるのかと思ってたのですが,何らの痕跡もなし。まあ,川が増水したらひとたまりもないような感じなので無理はないですね。むしろ,よくこんな中州から遺跡を発掘したものです。これぞ本物のゴッドハンドな気がします。
普通の生活道路にある普通の橋なので,なんの解説もないのかと思っていましたが,一応解説板がありました。平成10年設置で,10年も野ざらしになってたらまあ読みにくくなるのもやむを得ないところ。ライオンズクラブには是非再度新しい解説板を設置してほしいところです。
解説 | 草戸千軒と思われる場所 | 草戸千軒から草戸稲荷を見る |
というわけで,続いて待ちに待った福山競馬であります。