味な草競馬〜2011年望月駒の里草競馬〜 その2

 さて,肝心のレースであります。
 コースは,1周約400メートル。1周400メートルというと競輪場が思い浮かびますね。一応直線部分は存在しますが,競輪よりもカーブが緩いので直線は短いです。
 基本的に5〜6頭がマックス。一応プログラム上は8頭まで対応可能なかたちでした。串木野に比べたらずいぶん少ない頭数ですが,広い砂浜を使う串木野に比べ,狭いオーバルコースに多頭数が集まると事故やトラブルになりかねないので致し方ないところかと思います。

 1日のプログラムは,基本的に午前に予選。午後は予選の結果に応じて(確認してませんが,たぶん結果に応じてるはず)決勝レース。つまり,各馬1日2回走るわけですね。ただし,農耕馬など,予選を行わない種別のレースもありました。頭数が少なくて予選をやる意味がないということなのか,1日2回走るのはきつい品種なのかは僕には分かりません。

 到着したのは午前中でしたので,とりあえず予選レースを,買い食いや場内探索しつつ見ておりました。今まで言ったことのある草競馬は串木野浜のものとこれだけですので,串木野との比較にならざるを得ませんが……
 まず気付くのは,レースのテンポの良さです。草競馬なのでスタートにはそこまできつい縛りはなく,基本的にスタートラインよりも後ろに全馬そろったらスターターが白旗を振ってスタートします(再度後述)。で,「スタートラインよりも後ろに全馬そろったら」というのはなかなかのくせ者であることは言うまでもありません。が,頭数が少ないこと+周回コースであること(スタートラインを通り過ぎても1周したら帰ってくる),馴致が行き届いている?ことから,スタートまでに手間がかかりません(まれに行方不明になって「早く本馬場入場してください」と言われる馬がいますが)。なので,テンポよくレースが進んでいきます。1レース当たりの頭数は少ないですが,見ていて飽きません。レースが終わって後ろのお店で何か買って食べ終わったらまたレース開始,というイメージ。よくできてますね。

速歩レース
走ったらダメなので,普段からの馴致と騎手との信頼関係の構築が大変なのではないでしょうか

 写真だけ見ても絶対に分からないと思いますが,↑は速歩レース。走ったら失格というレースです。これは串木野にはありませんでした。珍しいなあ,と思っていたのですが,考えてみたら土佐黒潮牧場の懇親会レースがこれでした。とすると,脚の状態がよくない馬や(乗馬的な意味での)現役を退いた馬なんかが参加してるのではないでしょうか。

馬場整備 散水

 およそ3レースごとに馬場整備が行われます。馬場整備のたびに,アナウンサー氏から「竹花組お願いします」と呼ばれているので,覚えてしまいました。宣伝宣伝。馬場整備の車は笠松で一躍有名になった,鍬みたいなものを取り付けたものがメジャーなのではないかと思いますが,ここで使われているのは後ろに鎖のようなものが取り付けられているタイプ。鋤がついているものはほかのところでも使い道がありそうですが,これって馬場整備以外に使うあてはあるのでしょうか。
 また,午後の5レースか6レース終了時に,散水も行われておりました。トラックを見るとこちらも竹花組。
小さい子が騎手の場合,ハンデあり 間近で見る手綱さばき
コーナーを曲がるので,直線コースよりも騎手に求められる役割は大きいはず
手綱さばきが分かってよいです。レベルが高い
 さて,普段競馬を見慣れている人間としては,やっぱり気になるのは普段見慣れていないレースです。というわけで,やっぱり個人的には草競馬の花形はポニーレースなのです。

 ところで,ポニーというのは馬の品種名ではなく,肩までの高さが147センチ以下の馬全般を指す言葉らしいです。なるほど。ということは遊びに来ていたミニチュアホースもポニーの一種なんですな。

 串木野のポニーレースというと,予選では3〜4割は落馬・逸走しているイメージがありましたが,ここのポニーレースはそんなことが無く,非常にハイレベルでありました。これが驚き。もちろん,草競馬ですから一定の落馬放馬はあれど,ちゃんと皆さん馬を御しておられます。そして,オーバルコースだからこそ分かる併せ馬のすごさと難しさ。まさかポニーレースでコーナーの併せ馬を見られるとは。凄いです。
 また,オーバルコースは小回りなんですが,スピードをつけつつも内を回ってます(大型馬は大変そうでしたが)。これも凄いことなのではないでしょうか。

 ここで見ているときは気付かなかったのですが,どうもこのへんのポニーレースに特定の勝負服で出走していたのは乗馬クラブの方々のようで,JRAで行われるジョッキーベイビーズに参加される方もおられたようです。レベルが高いはずです。
 騎手になられる方は,将来的には勝っても負けても野次られる大変な仕事につくわけで,ここでは将来そうなってしまう代わりに,勝っても負けても暖かい拍手で迎え入れてあげたいなあと思うのでした。


 さて。この望月草競馬,スタートはゲートなどあるはずもなく,草競馬特有のなんとなく旗振ってスタートするタイプです。
スターター 馬をスタートに誘導 遠くから スタート

 このスタート,騎手の経験と技術で大きく差がつきます。見る限り,求められているのは,旗が振られるまでスタートよりも後ろにいること程度。つまり,フライングさえしなければどれだけ助走をつけてもよいのです。無理にたとえるなら競艇に近いな。
 とはいえ,半日以上見ていて,フライングは1回もありませんでした。フライングしたら何が起きるのか,失格になって掛金返還,一定期間出走停止……ではなく,たぶん1周回ってもう1回スタートなんでしょう。ただ,現実的に,フライングしそうな馬がいたらその馬に合わせてスタートが切られるのではないかとも思います。そのへん,スターターとのあうんの呼吸でスタートを切ることのできる騎手はすごいです。狙ったようにトップスタートを切って,スタート時点で数馬身差をつけていきます。

 ところで,9時からいたわけではないので詳しくは分かりませんが,大会委員長挨拶等は開始前ではなく,昼休みに行われておりました。
 そのほか,来賓紹介,祝電読み上げを経て,様々なイベント。佐久・望月の地域性が出ていてよかったです。

篠笛での民謡演奏 馬車に来賓を乗せて場内一週
消防音楽隊による演奏披露 保育園によるお遊戯披露
パラバルーンです。見ることすら20年以上ぶりじゃなかろうか。
僕のときは「手のひらを太陽に」でした。懐かしいのぅ。

 そんなわけで,午後の部。
午後1Rはポニー。1レースではありますが,激しいレース。落馬もありましたが,人馬怪我無く再騎乗完走。
↑2Rは速歩。あいかわらずみなさん馬をウマく操ります。
3Rはポニー。
1頭落馬し,その後カラ馬との併走が続きました。
カラ馬に絡まれながらも走りきったのは凄いことなんではなかろうか
4Rは競走馬。
なかなかうまく写真が撮れません
5Rは農耕馬。農耕馬,というのだからもっとばんえいに出てくるような巨漢が現れるのかと思ってたら,案外俊敏な奴らが出てきました。
内を小回りする42番と,明らかにスピードは上なのにコーナリングが苦手なのか大外を疾走して長い距離を走る43番の対決は,最後43番の勝ちに終わりました。
案外俊敏,とはいってもパワフルな馬なので,大外を疾走するとなかなか迫力があります。騎手の方の奮闘に拍手。
6Rは中間種。
串木野では中間種の騎手の方々はアメリカ西海岸のカントリーな雰囲気の出で立ちでしたが,ここではそんなことはなく。
ところで,中間種って,軽種と重種の中間ってのは分かりますが,クォーターホースなんかがここに入るんですね。
もちろん,見た目で馬の種類を判別できるほどの相馬眼は持ち合わせておりません。
7レースは再再度ポニー。
なんか写真の構図が固定化してきてて,変わった形にとろうと思いつつ結局元通りになりましたとさ。
8Rは競走馬。併せ馬がひたすら続きました。騎手の技量の高さが分かります。
併せ馬をうまく撮ろうと思ったら結局被写体のスピードがありすぎてぶれました。
ところで,コースは1周400メートルです。8レースは7周。競走馬のレースは上に上がるにつれて周回数が増えます。
なんとなくぼけーっと7周見てたんですが,距離にすると2800m。かなりの長距離ですな。
9Rは道産子。
3頭立てですが,いずれの馬もパワフルなので,馬場が狭く思えます。
3頭とも落馬。いかんせん馬が大きいから落馬がある度に見ていてひやひやしますが,一応皆さん無事で何より。
テンガロンハットのおじさんが陽気に乗っていて見ていて楽しめました。内柵を越えて内に逸走したのはこの馬だけだったような。
サラブレッドは臆病で走路上においてある縄をまたぐのも大変,という話を入障する馬に関してよく聞きますが,道産子だから大丈夫なのか,普段から農作業等で柵とかを乗り越えてるのか。
10Rは速歩。
ここで,出走馬を見て,初めて気付きました。聞き覚えのある馬がいる。
そう,28番,ビッグテースト。言わずとしれた中山大障害馬(もしかしたらGJだったかもしれませんが,NPには両レースの区別がついていません)。
記憶が正しければ馬色も栗毛でした。ただ,毛色に関する記憶の酷さには自信があるのでこれは自分を信じてはいけない。
乗馬用の馬の場合,名付けルールがどうなっているのか分からないので,もしかしたら同じ名前の馬かもしれません。
というわけで,すぐさまネットで検索。……ビンゴ。
どうみても,あの,常石の,ビッグテーストです。まさか,まさかここで会えるとは!!
あまりのびっくりな遭遇に慌てふためいてしまいました。
レース後に追いかけたら,引き運動してクールダウンした後,馬運車に入っていきました。お疲れ様。
速歩レースに出ているということは,脚がよくないのかな?というか,今何歳だ。
11Rの競走馬(乙)競走。8周,3200mです。
天皇賞と同じ距離を走ってるのに,小回りであるためにあまり長距離感がありません。
最終レース。最終レースにもなると,観客も減っていきます。
長距離を,併せ馬でひたすら走り続けます。小回りコースにおける正しいペース配分というのはよく分かりませんが,直線が短いために最後の直線で末脚爆発というのは期待薄。
そのためか,それとも長距離レースの中だるみ防止のためか,アナウンサー氏は絶えず「先頭は○○!!,△△は追いつくか!?」と,先頭争いを煽ります。
実際,小回り長距離の必勝法はどうなんでしょうか。

 とまあ,そんなわけで午後の部も終了。
 騎手の皆さん,出走した各馬,アナウンサー氏やスターター氏,皆様お疲れ様でした。

 さて,レースも終わったところで帰路につきます。第1目的地は最寄りのバス停。もうタクシーなんて使いたくありません。

幟1 幟2

 ですが,最寄りのバス停なんて当然会場では案内されていません。最寄りバス停の名前が「瓜生坂」であることは分かってたので,目の前の坂が瓜生坂だと決めつけて歩き出したのでした。坂を歩いて下っている人はNP以外にも数名おられましたが,持っている荷物から判断するに,近場に駐車した方々なのではないかと思われます。
 結局,バス停は見つからず(瓜生坂バス停はトンネルを抜けてしばらく歩いた場所にありました。どうみても歩行者を想定したトンネルではなかったので,瓜生坂を使わなかったのは結果的に大正解だったと思います。あのトンネルを歩行者が歩いたら歩行者的にも自動車的にも危なすぎる。丸亀の二の舞になるところだった…)。
 坂を下り,橋にさしかかると,向かいに鳥居を発見。せっかくなので道路を渡って鳥居へ。

 もともと,この場所に「豊川稲荷」があるのは地図で知っていたのですが,解説を見ると弁天様がどうしたこうした。鳥居を見ると「西宮神社」。現代っ子NPには神社のこのへんの理屈がさっぱり分かりません。
 とりあえず,奥の弁天窟方向は立ち入り禁止になっていたので,階段を上っていくことにしました。すると,見えてきました赤い鳥居と赤い社殿。豊川稲荷の登場であります。
 都会の人気(にんき+ひとけ)あるお稲荷さんは大量に幟が立って鳥居もたくさん立ち並んでいるわけですが,やはりこういう場所だと寂しい限り。せっかくなので拝殿にあがらせていただきましたが(本来靴は脱ぐべきなんでしょうが,野ざらしすぎたので靴で失礼しました),本殿前に並ぶ狐の陶器?でようやくお稲荷さんらしさがでてきたなーという感じであります。ただ,狐の陶器も割れてたりするので,夏の夜なんかにはなかなか楽しいことが起きてるのかもしれません。
 そんなわけで,お稲荷様にJBC的中祈願をして退散。御利益はなし。
 それにしても,旅行者としてはなかなか見慣れない雰囲気の3つの社を見られたので満足でありました。

崖についている
怪しいマークが気になるところです
看板 西宮神社 弁天窟への道。立ち入り禁止 弁天窟方向
堤防記念碑 弁天窟方向 階段 鳥居が登場 鳥居と拝殿
忠魂碑 拝殿 読めない
割れてる 拝殿からの眺め 橋から弁天窟 橋から川上方向
もう少ししたら紅葉がいい感じになりそう


 そんなわけで,橋を渡っていくと,望月宿の近くに。記憶が正しければ,このあたりにバス停があるはず……と思ってたら,ありました,望月バスターミナル。

馬を全面にアピールしてます バス乗り場 向かいにはシャトルバス乗り場

 帰りのバスを待っている際には,中仙道のガイドブックを持ったご夫婦が横に座っておられました。
 今回,初めて望月宿の存在を知った……というか,これまで「中仙道」といえば,「一日中山道」のイメージしかなかったのであります。
 この近くには五稜郭があったり,石仏群があったりと,なかなか文化的に面白そうでありまして,是非お城めぐりをしてみたいものであります。という具合に,文化の日を文化的に締めくくったのでした。正確には締めくくりはJBCの外れ馬券だったのですが,それはそれ。

 あらためて,競馬って,本当に素晴らしいですね。賭けの有無なんて二の次なのであります。
 そういえば,「賭け」と書いて,勝馬当て懸賞が行われてたことをここで思い出しました。NPは投票してませんが,そこそこ盛り上がっていたように見えました。対象は午後のレース2つ。単に勝馬をあてる,正真正銘の勝馬投票券です。的中者の中から抽選で商品プレゼント,という方式でした。投票券の枚数が限られているため,参加したい人は早めに並ばないとダメみたいです。

 再度あらためて,賭けって本当に楽しいですね。それ以上に,競馬は楽しいですね。
 オシマイ。

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 今回の題名はビッグテーストに出会えたので「味」という言葉を入れたかったためのものであります。