青天の聖天宮台湾旅行記番外編その2

 諸事情あって聖天宮へ。Wikipediaによるとここは,「現存する道教のお宮としては日本国内最大級」とされております。
 どういう方がどういう研究成果に基づいて書かれたのかはあえて捨象してこの文言だけから読み解くと,とりあえず日本にはほかにも道教のお宮が存在し,しかも「最大級」という曖昧表現であることからそれなりに大きなものが存在する可能性もあり,しかも現存しない道教が存在し,それも大きかった可能性があることになります。おそらく,書かれた方(手元にパンフがないのでパンフ準拠かどうかも分からない)が断定的誇張表現を避けるために曖昧な表現をとったのだと思いますが。

 日本において道教というと,自分にとっては「庚申信仰に影響を与えているもの」というだけです(正確には庚申塔等を見て「なんだこりゃ」と思って調べたら道教と関係があることを知った,という流れだけれど)。
 で,検索すると道教寺院として登場するのはこの聖天宮のみ。聖天宮はわりと最近建立されたものですので,それ以前はどうしていたのだろうか…。日本には台湾人の方々始め,相当数道教の信徒さんたちがいるように思うのだけれど……。仏壇や神棚みたいに,自宅でお祈りできるなにかがあるのでしょうか。
 てなわけで,NPは単なる野次馬にすぎず,信仰心ゼロですので,ほかにも道教寺院があるなら是非見てみたいのだけれど,国内だとどこにあるのでしょうか……。(注:その後の調査により,横浜に関帝廟媽祖廟,神戸にも関帝廟があることが判明しました。神戸はさておき,横浜はアウェーだから全く思い当たらなかったな……中華街があるんだから当たり前っちゃ当たり前なんでしょうけど。その他,Wikipediaによると,関帝廟は函館や福知山など,全国にあるようですね。また,ホームページを拝見する限り,聖天宮よりも横浜の関帝廟辺りの方が台湾的なお参りの仕方に近い気がします)

 そんなわけで,交通手段としては,車を使わないのであれば東武若葉駅からバスです。東武線内で寝ぼけて一度霞ヶ関で謎の下車をして到着が電車が一本分遅くなったため,バスも1本分遅くなりました。聖天宮の開門時間は10時〜と健全な時間だったので,開門ダッシュする予定だったんだがなー(このあとの川越の観光予定もあったし)。

 気を取り直して,戸宮交差点前で下車します。いかにも郊外の郊外,といった広々とした土地利用。こういう場所だからこそ寺院を建てられるだけの土地が見つかったのだろうな。
 しばらく歩くと見えてきました聖天宮。周囲に住宅もあったりして期待していたほどの場違い感はなく,それでも異国情緒漂う建物が埼玉県坂戸市に存在するのはなかなかに滑稽でありますな。

坂戸市観光案内
駅前のここに入ってました
バス停から聖天宮方向
こういう場所に登場するのかと思ってた
工事の関係もあってか,
期待していたよりも場違い感のない登場

 そんなわけで,日本の中の台湾,聖天宮です。まず,これは「せいてんきゅう」と読むようです。行く数日前まで「せいてんぐう」だと思ってました。多分水天宮のせいです。
 まず,駐車場が広いです。おそらく縁日(と呼ぶのかはさておき)には大勢の車がここにやってくるのだと思います。この日はその代わりにツーリングの方々がおられました。
 入場料を払って中に入ります。まずは前殿。
 入るなり,左右の柱に木像。パイプの中に押し込められていて,なんか変な感じです。神様だから気安く手を触れるな,ってことだと思いますが,写真的には嬉しくないです。で,解説によると,どうもこれは楠の1枚板で作られているようです。ううむ,凄い。最近の日本の仏像・木像ではここまでカラフルなのをあまり見ない気がするので,せっかくの一木造なのに木目が見えなくて残念な感じがしてしまいますが,大陸伝来の仏像は本来的にはこんなカラフルなものだったのだろうな。
 今ここで解説を見て,「扉を閉めると外を向きます」と書かれているのに気付き,この像が扉にくっついていることに気付きました。扉に彫刻を彫ることはあっても,扉に木像をくっつけるというのは日本ではなかなかないことなのではないかと思います。このあたりの文化の違いも興味深いですね。
 ところで,「魔礼寿」や「魔礼海」で検索したら,封神演義がヒットしました。原作も漫画も読んでないので,これがいつの時代の話なのかは分かりませんが,道教と関係してるんですかね?今からでも漫画を読んでみようかしらん。

 前殿ではおみくじを引くことが出来ます。出来ますというより,おみくじが大々的にクローズアップされており,前殿にきたからには当然おみくじを引くよな,というくらい堂々とおみくじが置かれております。道教では皆おみくじを引くものなのでしょうか?とりあえず僕はおみくじに興味が無いのでおみくじは引かずに,単にどういうものなのかを見学。
 仕組みとしては,いったん竹籤を引いてから,神杯を投げてその番号でいいのかを確認,神の導きに従ってその番号でいいのか番号を変えるべき(やり直し)かを決定,という流れのようです。木で出来た神杯を下に投げ落とすので,結構堅く大きい音がします。人によっては耳障りと感じるかも。それはそうとして,これを全員がやったら大渋滞が起きると思うんだけれど,これについて当局はどう処理する意向なのでしょうか。まあ,この日は寒い冬のいち休日にすぎなかったので,特に渋滞もなくというよりも特に人もおらず,行列も混乱も起きていませんでした。後ろに大行列が出来ている状態で「やりなおし」命令が連発したら僕の心は確実に折れると思います。あな恐ろしや。

駐車場 門の上にいるのは獅子? こんな感じ
どっちも口を開けているので,
阿吽のような関係にはなさそう
天門 解説
写真にすると読みづらいな
天門をアップで 前殿と左が鼓楼,右が鐘楼 鼓楼 前殿左の扉を入ったところ 振り返る 魔例海 魔礼寿
四大天王のうちの2王です 天井。凄い装飾
さすがに全部異なる,
ということはなさそう
如意四位正神の一人
招財使者
同じく利市正神 同じく招寶天尊 同じく納珍天尊
如意四位正神の解説 鎮守宝殿山門神
左手に手剣,右手に蕩魔杵を持っているようですが,
NPには蕩魔杵が何かよくわからないのでした
双龍柱。1つの石を彫って作ったとか。凄いな……。
鯉が龍になるという伝説をあらわしているようです。カープからドラゴンズへってことか
天井 前殿の様子 前殿中央部
純粋におみくじを引くための
場所なのか?
香木
烈風伝でこれをゲットしたら
かなり威信が上がりそう
おみくじの引き方 補足 男性用途女性用に分かれます
道教においてオカマとオナベがどっちを引くことに
なっているのかは不明
神杯
この形で「陰」とか書かれると
別のものを想像しそうです
窓越しに中庭と本殿

 さて,真ん中から降りて中庭へ。まっすぐ進んで本殿です。本殿前にはこれまた立派な龍の彫刻。いやー,こういった精緻な石の彫刻ってあまり日本で見ないような気がしますが,気のせいでしょうか。使われてる石も,日本の石仏などでよく目にする石とは違うもんな。台湾直輸入のようですが,やっぱり場所が違うと石質も違うんだろうな。

 本殿には解説係の方がおられました。ここで台湾の道教寺院のお参りの仕方を伺います。
 線香を3本持ち,神様の名前を唱え,自己紹介をして(日本語でOKとのこと),膝をついて詳しめにお願いをする。解説係氏曰く,「ここの神様は偉い(←正確な表現は「偉い」ではなく,徳が高いという意味の別の言葉でしたが覚えてません)ので,お願いはいくつ言っても大丈夫」とのことです。また,願いは詳しく言うべしとのことですが,どの程度詳しく言えばいいのかがよく分かりません。抽象的に「儲かりますように!」がダメなのだろうなというのは分かりますが,「競馬で勝てますように」「今日のメインレースが当たりますように」「今日のメインレースで5点買ったうち一番配当が高いものが当たりますように」等々,上を見ればきりがありません。まあ,このあたりは深く考えずに清い心で神様にお願いをすることにしたのでした。ちなみに,こんなアホなことを書きつつギャンブルに関するお願いはしておりません。そのため,この日の馬券は外れております。
 で,お願いをしたのち,線香を立てて,再度膝をついて12回お辞儀します。解説係氏曰く,このときはただ数を数えるだけでOKとのこと。しかし,お馬鹿NPは途中で何回お辞儀したのか分からなくなるのでした。数も数えられない奴に御利益なんてないよなー。

本殿 本殿内の説明
本殿内は撮影禁止とのこと
九龍網
5爪の龍が最強,とのこと。
東照宮の龍は3爪で,明に配慮したのでは,とのことです。
へぇー,そんなこだわりがあるのか。江戸幕府が本当に明に配慮したのかは謎だけど

あと,男神には龍,女神には鳳凰という区分けがあるんですね。へぇ〜。
本殿に登る付近の彫刻等
天公炉 なぜか移動した跡が
龍鳳柱。皇帝が龍,皇后が鳳凰ってことですね 柱にも絵が
脇の客殿 天井にも細かい絵が 中庭と前殿を望む 再度本殿を見上げる

 そして,さきほど飛ばした鼓楼へ。
 細い階段を上がっていくと上部階に到着。鼓楼というからにはもちろん太鼓があるのですが,なんとびっくり,自動で叩かれるハイテク太鼓でした。初めて見た。遠目には和太鼓と同じ形にみえる太鼓ですが,台湾式の太鼓と和太鼓だと材質や形状,作り方が違うのだろうか。残念ながら鳴る時間には滞在していなかったので分かりません。
 で,ここからだと彫刻が間近に見られます。こんな細かい装飾をどうやって取り付けたのか,本当に不思議です。雪や台風があっても耐えてるんだからたいしたものだよなー。掃除するだけでも気を遣う。

聖天宮の模型だと思う 弘法済世 記念スタンプがあったので
押してみました
階段下にあった置物
桃の置物が印象的
桃ってこういう形の品種しか
ないのだろうか
階段の様子
紅寿燭
台湾では白い蝋燭が葬式でしか使われない,というのも興味深い
陰鼓
機械仕掛けとは!
間近でみる龍やその他の装飾

 ちょっとまわりも歩いてみました。バスの時間が迫っているのでかなり駆け足です。
 本当ならば道教にまつわるもろもろのストーリーを理解して,それに対応する絵や彫刻を見てふむふむ言いたいところですが,予備知識がなさすぎてこれが限界です。
 ところで,本殿の真ん中に相輪のようなものが立っております。本堂の真ん中に立ってる姿って仏教建築ではあまり目にしない気がするな。

寿金亭 龍の髭
造形が細かい
トイレ。絵が特徴的 前殿
壁の彫刻。どれをとってみても細かい造形
一番右のは龍かと思ったら足が蹄だな。どういう動物なのだろうか
前殿説明 前殿越しに見る本殿 外の柱 聖天宮
獅子 再度本殿を見る 中庭脇の廊下 天井

 最後に鐘楼。とりあえずせっかくここまで来たんだから見ないと損損。
 でも,陽紅布は書きませんでした。願い事は本堂でお願いしたからいいのだ。
 それにしても,神様にお願いするのではなく,抱負を書くというスタイルは日本人的には斬新ですが,いいですね。神様の立ち位置が日本とは違うんだろうな。

陽紅布
願い事よりも,自分に対しての抱負を書くとのこと
志は500円が目安
一般的な絵馬より安いですね
陽鐘 外から叩いてならす方式 なので中は空洞
陽紅布台 お父さんの糖尿と
スクラッチに幸あれ
間近で見る彫刻 本殿

 そんなわけで,聖天宮をあとにします。ダッシュでバス停に戻ったところ間に合いました。よかったよかった。

最後に天門 伽藍を


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