駆け足で渡るオクスフォード

 日本人なら誰でも知っているイギリスの地名として,ロンドン,アスコット,エプソム,ニューマーケットと並ぶのが,オクスフォードとケンブリッジなのではないかと思います。ケンブリッジには,ニューマーケットからの帰りに(駅に)寄ったことがあるので,今回はオクスフォードに行ってみることにした次第。ガイドさんによると(そしてWikipediaにもあった),fordというのは浅瀬のことで,OxがFordを渡っていた場所がここOxfordであるとのことであります。Wikipediaによると,このfordはドイツ語のfurtと同じ意味を持っているとか。なるほど!!
 なお,Oxfordと書いてオクスフォードなのかオックスフォードなのか,謎なのですが,とりあえず貴重な環境資源の有効活用のために小さいッは削っておきます。

 さて,このオクスフォード,競馬場もないくせになにゆえそんなに有名なのか,といいますと,言うまでもなく大学があるからであります。
 そして,オクスフォードの基礎知識として常に語られるのが,一般にイメージするような「オクスフォード大学」なるものはなく,「オクスフォード大学」というのはカレッジの集合体である,ということであります。まあ,結論として,「別に俺が通うわけじゃないのでどうでもいい」ってことになるんだけれど。でもまあ,学位はカッレジからでなくオクスフォードから出てるんだろうから,まあオクスフォード大学ってことでいいんでなかろうか。まあ,自分が出るわけじゃないのでやはりどうでもいいな。
  なお,ここに行くに当たって重要な話として,「NPはハリーポッターを全く見ていない」ということが挙げられます。「ハリーポッターの映画で使われた施設」とか言われましても,全く知ったこっちゃありません。

 閑話休題。
 そんなわけで,一行(外国人団体であります。但し日本人は自分だけ)はオクスフォードに到着。最初はアシュモレアン博物館。ATOKが一発変換できないレベルの博物館だからと言って舐めてはいけない。ここは大英博物館と並び,まさに大英帝国の知の宝庫(侵略と収奪の歴史とも言える)。そして,世界最初の大学博物館であるとのことです。
 ちゃんと見ようと思ったら1日じゃ当然終わらない。で,今回のツアーは最初に解説ツアー(ガイドリーダーさんはオクスフォードの出であります),その後自由行動でして,とりあえずここはトイレ休憩兼最初のジャブ。てなわけでして,与えられた30分で何を見るかというと,日本コーナーであります。なんか以前もどこかで同じ行動をとった記憶があるけれど,どこかと思ったら大英博物館でした。10年以上たって行動に変化が見られないのはいいことなのか悪いことなのか。
 日本コーナーは2室でして,1つは明治以降,1つはそれ以前。36室は"The Shikanai Gallery"となっておりまして,検索したところ,このブログによれば,これは鹿内宏明氏の寄贈によるものだとのことであります。外国人はこういうところに注目するのかーと,やはり違った視点から日本を見られるのは非常に興味深い。当たり前だけど平戸って言葉は重要だし,鍋島なんて日本では文化面ではあまり意識しないもんなあ。
 とはいえ,ここの日本コーナーは狭いこともあって無理に茶室や地蔵置かんでも,と思う面もあったり(文化としては近代よりも前で2室に当てはまらないんだよな),なんとなくもうちょっと感があったりも。まあそれが分かっただけでも収穫。尤も,ネットを見てると,時期によっては浮世絵大放出,みたいなときもあるようであります。

博物館 こういうのを見ると
なんとなく西欧の博物館だな,
という気がしてしまう
36室 明治期の日本文化について
地蔵 日本仏教について
神道との絡みで書かれてます
日本でのキリスト教の
ごちゃごちゃぶりを
おそらく意図的にスルーしてるな
茶室。Ningendoという名前は鹿内夫妻がつけたようです
江戸期の日本 平戸 「鍋島」という名前を見るのはなかなかに新鮮
    
Views of Lake Xihu
どこかと思ったら,西湖のことでありました
印籠&根付
Arts of War。この獅子の彫刻のある兜が一押しされておりました

 ついでに,近くにあった黒柿の屏風(Coromandelはどうも黒柿のようであります)と,動物の戦いのタペストリー。なかなか見かけない雰囲気の絵であり,非常に興味深かったです。こういう場所だとしっかりと展示物を見るからな。
 中国との絡みで言うと,「西湖」を英語化すると"Lake Xihu"であると分かったのが収穫。中国人に「行って見たい中国の場所」を説明するにあたって,中国の名所の英語読みが分からなくてほんと難儀する。話は変わるけど,中国人から広州恒大の話をふられても全く反応できなかった自分がほんとかなしい。数少ない主体的にサッカー話ができる機会をこうやって喪失するのであります。




 このあと,エジプトコーナーでもう少し時間を使って,博物館を出ました。
 なお,ここで見るべき銘品(名牝がいたらなおよいが)の数々は,おそらく事前に予習していけばちゃんと分かったんでしょうが,とりあえずこの日は時間もとれなかったのでまた今度ということにしておきたいと思います。ドードーの標本の話とか見ると,やはり事前知識が必要であります。とりあえずWikipediaの「主な収蔵品」に挙がってるものくらいはひととおりの事前知識を入れてから行きたいところだな。アルフレッドの宝石の話だけはガイドさんがしてくれたけど。公式ページを見てたら,「1時間で見るならこれを見ていけ」的なガイドもあったりして,ものぐさなNP的人間にも配慮してくれておりました。うむ,是非再訪したい。誰か時間と金をくれ。

 続いて町へと繰り出します。予備知識が少なすぎて,ガイド氏の言葉をスマホでメモっても追いつかない。まあ,古くからあるイギリスの町並みを堪能できている,というだけでも充分に楽しいのでよしとします。
 メモより。かつては学生寮に門限が設定されていて,夜10時を超えると少額の罰金10時30分以降は門が閉まった。そうしたら生徒が壁を乗り越えてきたので,壁にマシンオイルを塗りつけて防いでいた,らしいです。どこの国でも似たようなイベントが起きておりますな。まあそりゃそうだ。
 ブロードストリートを進み,シェルドニアンシアター。かつてはセントメリー教会で学位を授与していたが,こっちに変更になったとのこと(理由は説明していたが聞き取れず書き取れず)。その横にあるのが,クラレンドン(鞍連丼と変換された)ビルディング。かつてオクスフォードユニバーシティプレスがあった場所とのこと。どうも床が脆くなったので移転したらしい。
 その向かいにあるブラックウェルという本屋は立ち読み歓迎で,学生は図書館に本がないときはここに行って本を読むこともあるらしい。

Martyrs' Memorial
直訳で殉教者記念碑ですかね
書かれている内容はそのままWikipediaにあり,また,ここによると
彫像のある3人はトマス・クランマー,ヒュー・ラティマー,
ニコラス・リドリーの3名。クランマーだけ日本語Wikipediaありました
Balliol College 殉教者たちが処刑された場所 Broad Street
シェルドニアンシアター クラレンドンビルディング ブラックウェル

 こんな感じで角を曲がり,Sigh Bridgeを横目に,さらにラドクリフカメラを横目に,ボードリアン図書館の中庭で撮影タイム。ウィリアム・ハーバートさんは過去の学長さんであるという以上の情報を持ち合わせておりませんが,とりあえずみんなと記念撮影させられる学長さんとして今後も末永くここに立ち続けていただきたいところです。なお,アホNPはハーバートという言葉からはジョニーしか出てきません。
 ラドクリフカメラの「カメラ」は,閲覧室的な意味を持つ言葉のようでありまして,俗に言うインカメラ手続とかのカメラと同じですな。なんというか,高尚な場所ですねえ,としか。こういう場所で勉強できる人は幸せなのかもしれませんが,おそらく中に入っちゃうとそういう幸せ感が薄れちゃうのではなかろうか,と,こことは比較にならないにしてもそれなりに高尚な場所に入って勉強せずに爆睡しただけの経験を持つ身としては思うのでありました。
 続いて,セントメアリー教会。どうも中でなにか行われているようでして,なかに入れず。

SighBridge
なんか音だけ聞くと
賽の河原を思い出してしまう
中庭へ 中庭
ハーバート ラドクリフカメラ セントメアリー

 それから一行は川べりに出まして,パンティングを行います。「パント」というと,完全にアメフトしか思い浮かばないわけですが,もちろんみんなで川に向かってボールを蹴っ飛ばす大会ではなく,船遊びという由緒正しき行動をするのであります。船は基本的に船頭さん1人と客5人。なんとなく,柳川を思い出したり。この船の最大の特徴は,なんといっても水面が近いこと。この角度で川を見られるのはなかなかに新鮮。そして,鴨とかが水面下で足をバタバタさせているのがよく見えます。素晴らしい。
 また,途中から船頭役をやっていいということなのでちょっとやってみた。基本的には,ポールを川底に刺してポールを手で手繰っていくことで船を前に押し出す,というやりかたのようです。ポールを刺した際の腕力で前に進むわけじゃないんだな。しかしながら,それで前に進むとしても左右の動きがまたちょっと難しい。うむ,なかなかにいい経験でした。
 どう考えても酔っ払った学生が川に飛び込んだりなんだりするための仕組みに思いますが,とりあえず観光客が30分程度楽しむ分には非常によかったです。なお,見ての通り船には救命胴衣や浮き輪の用意はありませんが,まあアホが落っこちてもなんとかなるんではなかろうかと。水深浅そうだし。

乗り場 パント 人が集まると餌を求めて
鴨が近寄ってきます
鴨なのは鴨でなく人間の方なのであります
船頭氏と記念撮影する
ブラジリアン
植物園が見える
行きたかったけど
時間が足りず
橋の上から声がかかる こんな感じの5人掛け 空を見上げる 中国人がトライしている 日本人もトライ
自分だけ顔を消しておく
それにしても,自分の写真を
みるにつけメタボっぷりが
嫌になりますな
船だまり

 そんなわけで,ここからは個人行動。一人でうろつくのもなんなので,台湾人と中国人と3人で動きました。2人は同じ研究室にいるようですが,どうもその研究室の中国系(台湾を中国系と呼ぶことの是非とかそういう問題には立ち入らない。そもそもfull of Chineseと言ったのは台湾人だしな)の割合が非常に高いらしく,実質的に中国だとのことでした。

 で,とりあえず昼食。適当に通り沿いのお店に入りました。おそらく事前準備をしていくと歴史あるお店に入れるんではなかろうかと。まあ気にしない。こちらには中国4000年の歴史が味方にいるのだ。そういえばこのまえ5000年の歴史ってフレーズをどこかで見かけました。1000年がたつのは早い。一応,このQueen's Lane Coffe Houseってのはヨーロッパ最古のコーヒーハウスを自称しておりまして,日本語Wikipediaもありました。肝心の部分が要出典になってますが。


 続いて,さっき入れなかったセントメリー教会。いい加減教会も見慣れてきているお年頃ではあるけれど,まあそれでもこうやって立寄って荘厳な雰囲気に包まれておくのは悪いことではない。そもそも日本でも神社や寺院にちょくちょく立寄りまくってるわけだしな。
 で,ここのタワーは見晴らし良好ということでタワーに登る列に並んだんですが,これがなかなか進まない。実は,遅めの時間にガイド氏が自身が卒業したカレッジを案内してくれるオプションもついていたんですが,ここで待たされまくったせいでこれにいけませんでした。まあ,仕方がない。
 塔からは360度,オクスフォードの景色を見渡すことができます。なんとかと煙は高いところに上るといいますが,やはりなんとかにとって高いところから見る景色は素晴らしいと思えるのであります。なんとかじゃない人はこれを素晴らしいと思えないんでしょうかね。
 くだらないことはさておき,ここオクスフォードではなにかにつけてガーゴイルの彫刻が施されております。ガーゴイルというと,ドラクエに出てくるあいつが思い浮かぶんですが,Wikipediaによると,どうもこいつは雨樋の役割を担っていたようです。なんと!そうだったのか。いままで何十カ所も教会やらなんやらを巡っていたのに,今の今までまったく雨樋として認識してなかった。いやはや,ほんとこれだからなんとかは高いところに登ったところで所詮なんとかなのであります。なお,雨樋の役割を果たしていないものはグロテスクと呼ぶらしいです。いやあ,グロテスクってこういう意味だったんですな。勉強になります。つまり,ちょっと前に書いた「なにかにつけてガーゴイルの彫刻が施されております」って文章はおそらく誤りなのでしょう。もう修正する気力がありません。いずれにしても,ガーゴイルだかグロテスクだかの造形がとてもリアルで,メドゥーサに固められた人なんじゃないかと思ってしまったりするわけなのでした。
 なお,この塔からは360度景色を望めるわけですが,残念なことに一周できる仕組みにはなっておらず,終点まで行ったら戻らねばなりません。そりゃあ混むし待たされるわけだ。まあ,観光客のためにつくった教会じゃないだろうから致し方ない。

遠くに教会が見える 正面 後ろ
椅子にはきちんと
彫刻が施されております
文字を刻む余裕までは
なかったようだけど
Baptism Oxford Martyrs らせん階段 改めて振り返る それぞれの像の意味を
理解できないのが辛い
奥で振り返る 途中から合唱が始まりました
どうも,これから行われる
結婚式の予行演習っぽかった
おそらく,処刑された方々の
名前だと思われます
パンフレットを途中で入手
最初から見てれば
効率的にまわれたのだが
Adam de Bromのお墓 Stall
外で並んでるときに撮った写真
正面にラドクリフカメラがあります
階段を上っていざ塔へ 途中,時計の仕掛けをみられる場所がありました
まあ,これを見たところでなにも分からんのですが
 
ぐるぐると塔をのぼっていきます



行き止まり

雨樋になってるこいつが
本物のガーゴイルだな

 外に出ますと,馬がいました。おそらく,結婚式のために新郎新婦が調達したものだと思われます(結婚式開催中は教会内の見学ができなくなるので,ある意味教会に入ったタイミングは非常によかった)。せっかくなので記念撮影。それにしても,黒光りしている馬は美しい。


ブリンカー着用

 さてさて。時間が余ったのでブラックウェルに寄ります。同行の2人が本屋に興味があるのかは分からなかったのですが,気にしない。とにかく本屋に入ると幸せになれる自分は安上がりであります。ここは地下にNORRINGTON ROOMという巨大なスペースを擁しておりまして,なんとも美しい本屋なのでありました。
 なお,ここは観光地化もしておりまして,写真撮影ポイントが用意されたりしております。なんとまあ。

ブラックウェル 日本コーナーを念写
ここの学生はこういう本で
日本史を学んでいるのでしょう
奥にPHOTO POINTが見える

 そんなわけで,なんだかんだときちんとオクスフォードを見て回ろうと思ったら2日〜3日は必要だな,ということが認識できたという意味も含め,なかなかに有意義なオクスフォード旅行でありました。パントは楽しかった!
 それにしても,どこかでハリーポッターの映画をタダでかつ日本語で見せてくれる場所はないだろうか。ないだろうな。

 ちなみに、Oxfordは翌年、真面目な修論準備のために再訪します。ガイドブックはそこで。

 



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