アグネスタキオン
過度の期待
いきなり知った口をきくと、世の中、過度の期待は禁物である。ましてや、競馬などという不確定要素満載の世界において過度の期待をする、ってのはぶっちゃけた話、裏切られることを期待している、といってもいいことである。逆に、あまり期待しないでいたほうが、期待に応えてくれたときの喜びが大きいってもんである。
こんな出だしで始めたら、ここから先の内容が容易に想像ついてしまうのであろうが、これについては過度の期待大歓迎。本当に想像通りの内容である。といっても、書き始めた段階で後先を考えてないので、どういう結末を迎えるか自分でもわかってないのだが。
さて、アグネスタキオン。デビュー戦は1番人気ボーンキングの3番人気。これを出遅れながら道中追い上げてさくっと33.8の上がりで勝利。まさにダービー馬の弟の名に恥じない競馬でデビューを飾る。
そして2戦目にクラシックへの登竜門、ラジオたんぱ杯3歳S。1番人気はクロフネ、タキオンは札幌3歳で2着のジャングルポケットを抑えての2番人気。このとき、僕はというと、ぜ〜ったいこけると思ってたのである。かといってクロフネも嫌いな馬だったので、がんばれジャンポケ、がんばれその他大勢!という感じでこのレースを迎えてたのである。何でタキオンがこけると思ってたか、というと、当然のことながら兄の2戦目と状況がかぶってたからである。
兄フライト。2戦目に選んだのは皐月賞への最終トライアル、若葉S。1番人気は大物、ヒダカサイレンス(この馬に過度の期待をしてた人も多いのでは)。そしてフライトは2番人気。そしてフライトは見事に気性の幼さを露呈して12着に惨敗しやがったのである。
状況が重なりまくるではないか!
はっはっは、タキオン君。ここで惨敗して、次のレースでおいしい配当よろしくね、などと思ってみていたところ...
脅威のレコード勝ち、ときたもんだ。
やった!クロフネ負けた!という喜びもそこそこに、タキオンの強さに驚いてしまったのである。
これがいけなかった。これがせめてレコード勝ちじゃなかったら。せめてもうちょっと危なっかしい勝ち方だったら。2戦目ではなく、4戦目くらいでこういう勝ち方をしてくれてれば。兄が2戦目で12着惨敗なんかではなくもうちょっとまともなレースを出来ていれば。
過度の期待なんてするはずが無かったのに。
してしまったのである。過度の期待。
一生の不覚であった。まだ一生終わってないけど。こんなに早く終わる気もさらさら無いけど。
本来、ひねくれものの僕は強い馬に拒否反応を示すはずなのに、過度の期待をもってしまったのであった。20世紀が終わろうとしていた。
21世紀。弥生賞。重馬場だった。
ほぉ〜ら、また負けそうな要因だ。2戦目の気性不安、なんていう話が思い出される。将来はサクラホクトオーになるんじゃないか?と不安になった人もいるかもしれない。
だが...なんじゃそりゃ!?また圧勝ときたもんだ。すごいすごいすごい。死角無いじゃん。重馬場でも大丈夫なんて、そんな最強馬また出てくるのかよ(もちろん「また」ってのはオペラオー意識してのことね)。
過度の期待は過度のまま、クラシックに突入していくのであった。
皐月賞。アグネスゴールド不在。勝負付けの済んだジャンポケが2番人気。河内が乗って内情知ってるダンツフレームが3番人気。
負けようが無いじゃん。
さあ、どーやって勝つんだ!?
ああ、過度の期待。もはや勝つことは前提。勝ち方に興味が行ってしまってるのであった。
そこで僕が買った馬券はタキオン単勝100円。三冠の単勝全部そろえよう!という、なんともくだらんものであった。この穴党でひねくれものの僕がこんな馬券買ってるのである。異常も異常、ちゃんちゃらおかしい事態なのである。
が...
急速にしぼむ過度の期待。
勝った。そんなの当然。そりゃこの相手に負けるわけが無い。
で、なんなの!?このレースっぷりは。人気どころの中では一番スムーズなレースをしていた。そこらへんはやはり自在の脚を使える強み、そして百戦錬磨の河内洋。
それでなんであんな勝ち方!?
ごちゃつきまくった後方のダンツフレームにジャングルポケット。こんなやつら、完膚なきまでに叩きのめしてるはずではなかったのか!?
それが藤田に「俺の馬が一番強い」と言われる始末。
藤田はいつも言ってるだろ!という突っ込みはもちろんあるだろうが、僕も思った。ダンツのほうが強いんじゃん!?と。
それくらい不満残りまくりのレースであった。
ま、関係者は言ってないし、むしろそんなこと言えるわけないといった方が正しいのだろうが、最大の目標はダービー。ダービーでは本当の強さを見せてくれるんだろう、と思い込むしかなかった。
過度の期待ってのはやりばに困る代物なのである。とりあえずはけ口はダービーへ。
が、そのはけ口が封印される。
そう、タキオン故障!のビッグニュース。
おいおい、どうすりゃいいんだ、このはけ口。
こうして、過度の期待は行き場を無くした。降着もんの審議である。青ランプ点灯である。
秋に引退が決定したが、んなもんどうでもよかった。とにかく圧倒的な強さを見せつけながら勝ち続けることに意味があるのであって、皐月のような欲求不満たらたらのレースをされちゃあ過度の期待が収まりつかんのである。
この過度の期待、とりあえず矛先はオペラオーに向かった。が、オペラオーも宝塚以降負け続けた。もうひっちゃかめっちゃかである。
そんななか、僕の無気力を尻目に、過度の期待を背負ったクロフネが、ステイゴールドが走った。過度の期待とは無縁の世界でアグネスデジタルも走った。
そして、過度の期待はいつのまにか気体のように雲散霧消し、今までどおり、普通の期待をナリタトップロードに、ナムラコクオーに、送りつづける平和な毎日が続くのである。
なんかジャンポケやダンツフレーム、クロフネのファンにけんかを売ったような文章になってしまった...本当はそんなつもりは無いです、はい。