フサイチコンコルド
強いけど弱い馬
「もっと体が強ければ…」こういう馬は、数え切れないほど多い。数少ないチャンスを生かして、大レースを勝った馬もいれば、思い通りに調教できずに、歴史に名を残せぬまま去っていった馬もいる。
そして、フサイチコンコルド。この馬は、過去3頭、POGで三冠馬を引き当てた、井崎脩五郎氏が、「この馬は来年のダービー馬だ!」と言ったほど、周囲に期待されていた。
デビュー戦、すみれSと、まさに絵にかいたような圧勝。多くの人が、「さすが!!」と思ったことだろう。
しかし、ここでコンコルドのエンジンがストップする。元来虚弱だったコンコルド、皐月賞を回避。続いて、プリンシパルSへ。同じく皐月賞を回避したダンスインザダークとの一騎討ちムード。が…何と熱発で回避。一方のダークは完勝。「幻の皐月賞馬」の称号を背に、ダービー1番人気。
一方、「未完の大器」のまま終わりそうな気配が濃厚のコンコルドは、何とかダービーへの出走体制を整える。そして、「関西の秘密兵器」の称号を与えられる。
相変わらず虚弱なコンコルド。ダービー当日も熱発。
「幻の皐月賞馬」VS「本当の皐月賞馬」VS「ダークの天敵(タッチのこと)」SS産駒3頭に「関西の秘密兵器」が挑む。
そして、ついにやってしまった。なんと、「関西の秘密兵器」が勝ってしまったのだ。しかも、3戦め。虚弱馬コンコルド、栄光の時。
で、例の井崎氏は相変わらず外していた。敗戦の弁。「新馬を見て、『これはダービーを勝てる』と思った。すみれSを見て、『マジで行ける』と思った。プリンシパルS回避して、『こりゃダメだ』と思った。」
さて、もはや秘密でもなんでもなくなったコンコルド。京都新聞杯へ。が、ここでも虚弱ぶりを発揮して回避。翌週のカシオペアSへ。が、なんと阪神障害S大差ビリのメジロスズマルに完敗。マスコミは、まってましたとばかりに書き立てる。「コンコルド墜落!」
コンコルドは菊へ。相変わらず太め。思うような調教をつけられないのが悲しいところ。レースは、ダークが4角で最後方という、鞍上の大失敗を補う猛烈な追い込みを見せ、GT初制覇。コンコルドは、岡部のロイヤルタッチにも負ける。
ここでコンコルドは年内休養。「500kg切るようじゃないと…」と言われていたのに、太めのままお休み。しかも、「輸送に弱いから、関西のレースしか使わない」という。「種牡馬になったら栗東で種付けか?」という噂が一部(俺の周辺)で飛んだ。
年が明けて、目標レースは、大阪杯。マーベラスサンデーと初対決だ。イシノサンデーも金杯を勝って波に乗っている。ユウトウセイもいる。ロイヤルタッチもいる。ここを勝って、ダービー馬健在をアピールせねば…。
が、アピールしたのはダービー馬の虚弱ぶりであった。骨膜炎で回避。再び休養。
そうこうするうちに、関西の中長距離GTのない秋シーズンに。コンコルドは一体何をすればいいのだ、コンチクショー!
と思ってたら、コンコルド引退の記事。しかも、日経新聞のスクープ。コンコルド引退は別に覚悟してたけど、日経にスクープされるってのは、びっくり仰天。
こうして、コンコルドは、なんとなく力を出し切らないまま引退。
はっきり言おう。コンコルドは強い。ナリブーなんてもんじゃない。ローレル級と言ってもいい。ローレル・トップガンが消えた'97秋シーズンを背負って立てたのは、バブルでも、グルーヴでもなく、このコンコルドだ。そのコンコルドの引退は、力を出し切ってから引退したローレルやトップガンのそれよりも、残念無念なものである。
そんな虚弱野郎の引退式は関東だった。