マティリアル
史上最も有名なトライアルホース
戦績19戦4勝。勝った重賞はスプリングSと京王杯AH。知名度と戦績が一致していない。ここまで有名なくせにGU1勝、GV1勝。
知名度と戦績が一致していない馬としては、他に、スーパーオトメやミスタートウジンらがいる。トライアルホース(イマイチ馬ではない)としては、サンエイソロンがいるが、彼は重賞4勝。マティリアルとは格が違う。
マティリアルはシンボリ牧場期待の子であった。海外遠征の時のために、わざわざ、「シンボリ」という冠号を取っ払って、Materialという名をつけたのだ。はっきり言って、サクラのオーナーの全さんに共同馬主を持ちかけて断られたシンボリルドルフとは訳が違う。
さてそのマティリアル、ちょっと回り道をして、サクラロータリーに負けたりもしたが、1番人気でスプリングSへ。
で、レース。マティリアルは後方。「おいおい。」と思っていると、直線に入って、ぐぃーんと伸びてくる。「おいおい。」で、なんとなんと、勝ってしまった。「おいおい、マジかよ。」
マジである。この直線だけで、時間にして30秒足らずで、マティリアルは史上最も有名なトライアルホースになってしまったのだ。
上がり3ハロンは、36.1。…え?
そう、あの強烈な脚で日本中にその名を知らしめたマティリアルの3Fの上がりタイムは、36.1だったのである。競馬は文字ではあらわせない。にしても、36.1で直線ぶっこ抜かれたその他大勢ってのもちょっと問題あるような気もするが…。
というわけで、上がり36.1で日本一有名になったマティリアルは、上がり36.1の脚が買われて皐月賞1番人気。
が、実は、マティリアルは、あの上がり36.1がいけなかったのか(いい加減しつこい)、体調を崩していたのである。そこで、やっぱり出ました、馬優先主義者岡部幸雄。マティリアルを放牧に出すことを進言。が、オーナーは拒否。まあ、シンボリの和田さんがそう簡単に回避させるわけが無い。
つーわけで、1番人気の皐月賞は、よく追い込むも3着。勝ったのは弥生賞組のサクラスターオー。
ダービーへ向けて、マティリアルの調子はさらに悪化。主戦岡部と、田中調教師は、オーナーに回避を進言。が、拒否。そりゃそうだ。あんだけ期待した馬をダービーに出さないってのは悔しい。
そしてダービー。サクラスターオーは骨折で回避。三冠の夢は散った。で、ここでも上がり36.1は生きていた。なんと、マティリアル1番人気!
あの上がり36.1は、史上最も強烈な上がり36.1であったといえよう。
さて、さっきから上がり36.1とバカにしまくっているが、さらにマティリアルに悪いことを書くと、何と18着という大惨敗であった。ひどい1番人気もいたもんだ。まあ、これに関しては1番人気にする方が悪いって言っちゃあ悪いが。
ちなみに、勝ったのはメリーナイス。3歳チャンプの力を見せつけ、6馬身差の圧勝。
さて、マティリアルは没落する。岡部にも捨てられ、出ては人気になって負ける。でもって、この、「人気になる」ってのがポイント。クリールサイクロンがマティリアルと同じ道をたどっても、人気になんてならない。
で、マティリアルは運命の京王杯AHに登場する。前走の関屋記念は、惜しい2着。復調の気配が見え、1番人気。鞍上は岡部。セントライト記念以来だ。
レーススタート。「おいおい。」なんと、マティリアルは先行する。そして、第3コーナーでは先頭に。そして、第4コーナーも先頭。中山の坂も先頭。そして、先頭のままゴールイン。
これが待ちに待った栄光のゴールだ!!
岡部もガッツポーズ。それだけ嬉しかったのだろう。
が…岡部は突然下馬。
…そのあとはもうご存知の通り。
マティリアル…享年6歳。
最後に見せたあの足は、一体何を意味するのか。
上がり3ハロン…34.7。