ナムラコクオー物語(4歳編・その1)
シンザン記念
年が明けて、ナムラコクオーはシンザン記念に出走しました。いまだにクラシック勝ち馬を出していないことであまりにも有名なレースです(タニノギムレットがその後よーーーやく勝利)。
ナムラコクオーは前走の重賞勝ちが評価されて一番人気。ホースニュース馬では◎が横並び。そして、ナムラコクオーはこのレースを圧勝します。本当に圧勝です。はじめて見た時びっくりしました。直線に入った時には確かに馬群のなかにいました。ところが、気づいたらナムラコクオーと後続の間には7馬身以上の差が開いていました。まさに一瞬の出来事でした。そして、ゴールに入るときにはもうすでに上村騎手は手綱を抑えていたのです。
このレースが競馬初心者の僕にとってどれほどショッキングだったかはここで語るまでもないと思います。本当にすごいレースでした。
いままで、1600m以下の芝レースで5馬身差以上をつけて勝った馬の一覧を作ってみました(こんなものを作ってたからアップが遅れたのです。すいません。新しいウインドウで開きます)
ちなみに、このレースには2着馬イイデライナー(京都4歳特別)をはじめ、3着エクセレンスロビン(新潟3歳)4着ナガラフラッシュ(小倉3歳・TV東京3牝S)、5着ボディーガード(デ杯3歳Sでブライアンに勝利、阪急杯)、6着イナズマタカオー(中スポ4歳、北九州記念、中京記念)、11着サムソンビッグ(きさらぎ賞)と、6頭もの重賞勝ち馬(後に勝つ馬も含めて)が出走していました。
決して低レベルなレースではなかったのです。
そして、ナムラコクオーはナリタブライアンの強力かつ最大のライバルにのしあがったのです。無理もないことです。あのナリタブライアンが持つ爆発力に勝るとも劣らない爆発力を見せたのです。
また、このレースは杉本清アナ、競馬名実況100選「三冠へ向かって視界よし」二にも収録されております。
「ナムラコクオー先頭、やっぱりこれは強い、モノが違う漢字、2馬身から3馬身と差が開いていく。今年はシンザン記念からクラシックホースが誕生しそうだ」
野村調教師
変則の正月休みをうまく切り抜けたことが第一の勝因でしょう。坂路で一番時計が出るほどで、暮れの好調をそのまま維持することができました。ラジオたんぱ杯3歳Sから3週間、この時期としては押せ押せで使ってきたわけですが、2月の寒さが厳しい時期に無理をさせたくなかったからなんです。
レース前からある程度の自信はありましたが、まさか7馬身も離すとは……。2000mの前回とは違い、折り合いの心配がなく安心して見ていられました。抜け出すときの脚は速かった。時計もこの時期なら悪くないし満足しています。
これで3連勝。もちの木賞で2着に敗れはしましたが、そのときに走る予感はしていました。でも、こちらが思い描いている以上の内容で勝ち進んでいる。一流どころが相手になっても、遜色ない競馬ができるでしょう。
上村騎手
内枠だったこともあるんですが、意識的に馬込みに入れて競馬をしてみたんです。それでもまったく気にしている様子はありませんでしたね。
道中は楽に進むことができましたが、4コーナーで少し手応えが怪しくなったんです。しかし気合をつけたらまた反応がよくなったのでホッとしました。いざ直線に向いて追い出したらこの強い内容ですからね。抜け出すときの脚は本当に素晴らしかったです。最後は、今後のことを考えて抑える余裕もありました。
これで重賞2連勝、とにかく強い馬です。これからの課題も、ラジオたんぱ杯3歳Sで2000mを経験したのでそれより長い距離がどうかな、ということくらいですよ。これで春のクラシックがほんとうに楽しみになってきました。
伊藤氏
好調を維持していると聞かされていましたし、今回は勝ちパターンの競馬ができるかと思っていたんですが、野村先生は今回は勝ち負けは別にして、馬ごみに入れる競馬をさせるつもりだったそうですね。こっちはそんなこと知らないから、4コーナー手前で包まれたときはどうなることかと思いました。
これでクラシックの有力候補に踊り出たって言われますけど、シンザン記念からクラシックホースが出ていないというジンクスもありますしね。いや、やっぱり気になりますよ。まあ、馬を信じるしかないでしょう。母の父のサドンソーも祖母の父のツイッグもクラシックに縁がないから、って言う人もいて、そうだよなあ、とも思うんですが、逆にうちのような地味な血統で、海外からきた良血馬たちを負かしてやりたいという燃え上がる気持ちもあるんです。
(以上優駿)
上村騎手
4コーナー手前で手応えが怪しくなったんです。でも、そこから気合つけたら、元に戻ってくれました。今日は枠順が内ということもあったが、馬混みを経験させようと思ったんです。全然気にするところはなかったですね。直線に入って抜け出すときはすごい瞬発力、最後はあとのことを考えて意識して抑えたんです。距離の心配もないし、これからのクラシックが楽しみになってきました。
2着イイデライナー岸騎手
終始馬混みに入ったのが響いていますね。直線はよく伸びているんですが、勝ち馬はとにかく強すぎました。
(競馬ブック)
上村騎手
内枠だったこともあり、馬ごみの中でケイバをしてみました。そうしたら4コーナー手前で手応えが悪くなってビックリ。気合をつけたら走る気を出してくれましたけど、ヒヤッとしましたよ。
(競馬報知)
さて、この後に発売された競馬四季報において、驚くべき事実が発表されたのです。
【現況】500万下の平場を7馬身ブッチ切りレコード勝ち。阪神の3歳Sは芝の2000mで折り合いが心配されたが、スタンド前で少し行きたがったものの、すぐ折れ合ってパリスナポレオンに4馬身。前走のシンザン記念ではイイデライナーに7馬身。その時、初めて手前を替えたというから、まだよくなる余地は十分。しかも前走後、歯がわりもしている。腰もパンとして、次走は弥生賞を目指す。(競馬四季報)
なんと、手前を替えていなかったにも関わらず、コクオーはスーパークリークとメジロマックイーンの素質を足して2で割ったような馬(しつこいっすね)に4馬身差で勝っていたのです。
いやはや、なんとも恐ろしい馬でです。シャドーロール無しではろくに調教もできない馬とは違います(比較になってないか^^;)。
こうして、コクオーは、満を持して弥生賞に駒を進めることになりました。